今回は現在進行中のスペインでの水中発掘調査の依頼主、ハヴィ(Javier Pandozi) とキケ (Enrique Aragon) と私の関係、及びどのように私が海外の考古学者から依頼を頂いているかを紹介したいと思います。
現在私はスペインの地方自治体などからの依頼を受けて学術調査を行なっているIBEAMという学術機関からの依頼を受けスペインで働いています。
彼らは僅か6人ほどの小さなチームなのですが、もともとスペインで政府の依頼を受けて発掘を行なっているプロの考古学者たちが、水中遺跡の学術調査を行うために立ち上げた考古学の精鋭集団です。
今回のIBEAMからの依頼はそのメンバーであるハヴィとキケを通して行われました。
ハヴィとは2014年のクロアチアでの水中発掘で出会い意気投合し、キケとは2016年にオーストラリアでの水中調査で知り合い仲良くなりました。考古学の場合は1ヶ月以上狭い空間で寝食をともにするため、気の合う仲間とはとても仲良くなります。
その後、もともとハヴィとキケは学生時代からの親友ということもあり、3人で様々な情報交換を行なったり、学術雑誌に共著で投稿したりしていました。
常々3人で一緒に発掘調査を行いたいと話していたのですが、今回のポルテ・クリストの水中発掘調査は2015年から地方自治体の予算を受けて行なっている調査の最終年で、来年からも調査を行うための結果を確実に上げるために私に声をかけてくれました。
実はこのように私のところに来る依頼は私の友人の水中考古学者か、その友人の友人の考古学者がほとんどです。水中考古学は考古学の一分野に過ぎず、とても小さな学問なので、水中考古学を大学で教えている教授や、博物館内の水中文化遺産専門家、政府機関の水中考古学者、私のように職業としてこれらの機関から依頼を受け働いている水中考古学者などを含め、水中考古学一本で生活している研究者は世界中に500人足らずと言われています。その他の研究者は普段は陸上の考古学を専門にしていたり、工学系の専門家であったり、学生や趣味の一つとして水中考古学に携わっている人がほとんどです。
とても狭い世界なので、友達の友達までいけばほぼ世界中全ての水中考古学者と繋がってしまうような環境なのです。
私の場合は1年のほとんどを各国の学術機関から依頼を受け、機材を片手に水中発掘調査を渡り歩いています。それらの調査には別の国からも水中考古学が招かれていることも多く、そこで一緒に働いた考古学者が次に自分の国で学術調査を行う時に私に依頼をくれます。また私が参加した学術調査の結果を読んだ別の水中考古学者が、彼らの友人でもある私の友人水中考古学を通じて依頼をくれるのです。もともと大学院卒業後は大学に研究員として残るつもりだったのですが、博士課程の最終年に現在のように様々な研究機関から水中発掘作業の依頼をいただくようになりました。正直このような状況になるのは予想外だったのですが、もっと各国の学術調査に加わり知識と経験を積みたいと思い、そのような機会をいただける状況はありがたいので、現在のようなライフスタイルを選びました。
偉そうなことをいいましたが、私にとっては、あらゆる時代の沈没船を巡る旅をしながら友人に会いに行く生活です。つまり水中考古学者であることをうまく利用して、仲間たちと歴史の謎を解く旅をしています。体力のいることなのでいつまで続けられるかはわかりませんが、身体が健康なうちは自分の情熱に従順に従おうと思っています。
今回のハヴィとキケとの水中発掘調査もそんな自分の原点を再確認させてくれるようなものになっています。
まだまだ世界的に数の少ない水中考古学者。お勧めの職業です。
<発掘プロジェクト>
<船の考古学>
<おまけ>