スペインでの水中調査が無事に終わりました。2週間半でしたが古代船2隻と近代船1隻の水中発掘ととても充実したプロジェクトでした。
古代の沈没船に実際に見て、触れて、今までわからなかった歴史を紐解いていくのはとても楽しいことです。
しかし昔からの友人や新たな友人と一緒に生活しながらの発掘が私にとっての何よりの喜びになります。同じ趣味を持った大人たちが毎日一生懸命謎解きをする。そして仲良くなっていく。これが水中考古学の1番の醍醐味です。現地での発掘調査は図書館や研究室の研究だけでは得られない充実感があります。
水中考古学、特に造船史を中心とする船舶考古学は研究対象が船という特殊なものです。船は古来から海(国境)を越えて旅をしてきた機械で、船の所有国内だけではなく他の国で沈むことも多く、自然とその沈没船の研究チームは国際的になることが多いのです。さらに水中という特殊な発掘環境での発掘調査は私のような専門家を必要とするため、なおさらチームの国際化が見られるのです。
つまり水中考古学者というのはとても特殊な職業で、別の国に行き、他の考古学者と寝食を共にしながら謎解きを楽しむ。そしてそれを一年のうちに何回も行う職業です。
しかし、この仕事の最大の難点が仕事を終えプロジェクトを離れる時の「寂しさ」です。発掘期間は限られており、水中作業は過酷で、寝る間を惜しんで作業しなければなりません。そのためにチームでお互いを助け合って仕事と生活を送ります。どんなに仲良くなっても、発掘作業の終了は彼らとのしばらくの別れを意味し、日程が残り少なくなるととても落ち込みます。
贅沢な悩みなのですが、私もこのような別れを1年で10回ほど経験しなければなりません。
これが水中考古学者の宿命ともいえるのです。
しかし私はこの「寂しさ」こそが自分の水中考古学者としての幸せを測ってくれるものさしになってくれているのだと思います。
つまり別れの時が寂しければ寂しいほど、それは自分が幸せな時間を過ごせていたという証明になっているのです。
「寂しさ」が水中考古学者の幸せの測りかたなのです。スペインのチーム、最高でした。
次は11月末にまた依頼をいただきました。今はとても寂しいですが、またみんなに会いに帰ってきます。
次はどんな沈没船と新しい仲間に出会えるのか?しばらく旅は続きます。
ありがとうスペイン。最高でした!
<発掘プロジェクト>
<船の考古学>
<おまけ>