今回の短いローマ滞在が終わりました。今回のローマ訪問の目的は水中考古学の同僚のピーターに会うことでした。
仲の良い友人でもあるピーターとは普段から色々な仕事のアイデアや計画のやり取りをしており、今回ヨーロッパでの仕事の合間に少し時間ができたので、ローマのブリティシュ・スクールに研究員として滞在しているピーターに会いに来ました。
ピーターはアメリカ人で、ノース・カロライナ州にあるイースト・カロライナ大学で修士号、その後イギリスのサウザンプトン大学で博士号を取得しました。両方ともテキサス農工大学の水中考古学(船舶考古学)プログラムとはライバル関係にあり、私たちが普段から仲の良いのを不思議がる同僚もいます。
私は彼のことを実際に会う前から優秀な若手の水中考古学者がいると噂で知っていました。彼と私のことを知る水中考古学者の同僚からは、いずれ私と彼は一緒に働くことになると言われていました。それから私も彼がどんな研究者か気になり始めていました。実は彼も同じように私のことを知っており、会う前から私の研究を追いかけてくれていたようです。
そして2017年にピーターが共同ディレクターを務めるギリシアでのプロジェクトに、彼の同僚たちの勧めで私の元に仕事の依頼をくれることのなり、はじめて一緒に働くことになりました。
1ヶ月間ギリシアで一緒にルームメイトとして共同生活しながら水中発掘調査を行ったのですが、彼と私は同い年でもあり、研究に対する思考も似ていて、すっかり意気投合してその後も定期的に連絡をして取り合いお互いの研究について相談し会うようになりました。
ピーターは私が知る限り30代の世界の水中考古学者では最も優秀な研究者であり、最も信頼する研究者の1人です。
今回の訪問も来年以降、また再来年以降の長いスパンでいろいろなプロジェクトの計画を一緒に立てており、その計画を進めるためで、訪問中も一日中いろいろな水中考古学の可能性について話し合っていました。全てがうまくいてば数年後にも驚くようなプロジェクトを行えるかもしれないので楽しみにしておいて下さい。
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ブリティシュ・スクール・アット・ローマ
そのピーターが研究員として滞在しているのがブリティシュ・スクール・アット・ローマ(British School at Rome) です。スクールいう名前がついているから大学関係の研究機関と思うかもしれませんが、実は完全な研究機関です。
ローマのブリティシュ・スクールには考古学系、歴史学系、美術系で補助金を受けている若気の研究者が共同生活をしており、住み込みで、そこを基点にしながら学内外で研究生活を行なっています。
私も今回3日間滞在させてもらったのですが、面白いのが、各研究者が完全に個別で個々の研究を進めているのですが、朝食・昼食・夕食・そして午後の紅茶の時間では食卓を共にしているのです。その様子はまさにハリー・ポッターの映画に出てくるような様子で、食事中は研究者同士で様々な話で盛り上がりながら意見を交わします。
建物内には長年の資料を備えた図書館も完備しており、最長で2年住んでいる研究者を含め半年だけの研究者や、私のように数日だけ訪れる研究者も多いみたいです。その様子はまるで「学者のバックパッカーの宿」のような賑わいです。私はこのような研究機関があるとは知らなかったので正直驚きました。それと同時にここに住み込んで研究に没頭してる研究者が羨ましくもなりました。
長い歴史と芸術の中心であったローマには、イギリスの他にも、アメリカ、フランス、エジプト、ルーマニアの「スクール」と呼ばれる似たような研究機関があります。
ピーターとの様々なプロジェクトの計画を含め、とても充実した3日間でした。これからどんどん水中考古学が面白くなりそうです。