ブルガリアで行われている注目の水中考古学プロジェクトを紹介

私は全く関係ないのですが、たまたま仕事で訪れているブルガリアで今年まで行われていた話題の水中考古学のプロジェクトの展示会があったので、そのプロジェクトの紹介をしたいと思います。

そのプロジェクトは黒海水中考古学プロジェクト、通称マップ (Maritime Archaeology Project in Black Sea)と呼ばれています。

このマッププロジェクトはブルガリア政府の文化庁とイギリスのサウザンプトン大学が中心となって行われているプロジェクトです。

基本的には沈没船だけでなく、ブルガリアの黒海沿岸で見つかった様々な水中考古学の遺跡を包括的に発掘分析し、黒海に関わるブルガリアの考古学を盛り上げるという目的だったのですが、やはり注目を浴びたのは沈没船遺跡の発見でした。

黒海というのは陸地に囲まれた海で、約1万年前までは淡水の湖でした。それが現在のボスポラス海峡が決壊して、地中海と繋がり、海になったのです。今でも黒海に流れる川の数は多く、塩分濃度も低くその他の成分も地中海とは異なっています。

さらに黒海の海底には他の海で見られるような海流がなく、海水が混ぜ合わされることなく留まっている珍しい海で、水深200メートル以下の場所は海水が無酸素状態に保たれています。つまり保存状態が他の場所に比べて極端に良いのです。

そんな黒海で海底探査のロボットを使い、マッププロジェクトのチームは3年間の探査で55隻もの沈没船を発見しました。中には紀元前2世紀頃、および西暦2世紀頃の貴重なローマの船も見つかれました。

ローマの船自体は私も先月スペインで発掘していたように地中海の様々な場所で発見されているのですが、マッププロジェクトによって発見された船は黒海特有の環境のおかげで船の船体上部構造まで素晴らしい保存状態で見つかりました。

これらの保存状態の良い沈没船は水深200メートルと水深800メートル地点で発見されたました。しかしダイバー(人間)が潜るには深すぎるためにロボットが使われました。

ロボットにはカメラが搭載されており、そのカメラで撮られた画像からフォトグラメトリーを使用して3Dモデルが作成され、さらに3Dプリントも行われました。

これらの3Dプリントされたモデルからもわかるように、黒海の沈没船は船体上部まで見事に形を留めています。

ローマ時代の船がここまで原型を留めた保存状態で発見された前例は今までなく、昨年の水中考古学学会の最大のニュースの一つとなりました。

今後データの処理と分析が進めば、古代ローマの船について多くのことがわかるでしょう。私も水中考古学者の端くれとして、マッププロジェクトチームの分析結果が発表されるのを心待ちにしています。

それにしてもこんなプロジェクト、羨ましい!

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