フィンランドサウナ

現在は次の水中発掘調査の仕事のためにギリシャにきているのですが、今回は忘れないうちに2週間前に仕事をしていたフィンランドのサウナ文化を紹介したいと思います。

フィンランドでサウナというものは日本における銭湯や温泉という文化よりも密接に人々の生活に根付いたものだと言えます。一般のマンションの多くに住民のためのサウナが備え付けられていたり、街中に公衆サウナが点在しています。また郊外の別荘の殆どに家族用サウナがあります。友人のフィンランド人達はみんな最低でも1週間に一回はサウナに行くと言っていました。中には毎週必ず2・3回は行くという人もいました。毎週決まった曜日(木曜日はサウナの日という感じ)に友人達と行くことが多いみたいです。ある意味フィンランドでサウナは友達とお茶を飲みに行きお喋りする感覚なのです。

別荘地や海辺の公衆サウナに多いのが上の写真にある様な水辺に隣接されたサウナ。こちらはまずサウナに入って汗をかいた後に一瞬(5秒から30秒ほど)水に浸かり体をさっぱりさせ、その後は水やビールなどを飲みながら外や部屋の中で体が少し冷えるまで涼み、その後またサウナに戻ります。一回のサイクル20分から30分程度で(サウナ5分程度度・水浸かり1分程度・外で涼み15分から20分程度)、これを3から5回程度繰り返します。フィンランド人はこの水に浸かるタイプのサウナをサマーサウナと呼んでいました。しかし中には冬でも氷に穴を開けて水に浸かる強者もいるそうです。ちなみに夏でもコペンハーゲン付近の水温は約10度。冷たいです。

コペンハーゲンの海や湖などの水辺から離れた街中にも公衆サウナは沢山あります。街中のサウナでは浸かる水がないので、代わりにシャワーで汗を流し、外や涼しい部屋で体を冷まします。なので体が冷えるスピードはゆっくりなのですが、コペンハーゲンだと真夏でも夜の気温は15度程度なので一年中サウナを楽しめます。サウナに入る期間や外で涼む時間に基本的に目安となる時間はなく自由に楽しみます。

フィンランドサウナと他の国のサウナの1番の違いはその温度。サウナ内の焼け石には自由に水をかけて温度を調節できるので、フィンランド人だけのサウナでは温度はなんと115度程度にもなります(女性用は90度から100度程度と少し男性用よりも温度が低いと言っていました)。これは耳や手足の指が痛くなる熱さ。耳の上部がつねられている様な感覚になり、鼻からの呼吸はまずできません。また金属は(ロッカーの鍵など)は触れないほど熱くなるので火傷しないように注意が必要です。そのためロッカールームの鍵は足首に付けるのが基本なのだそうです。この熱さはフィンランドのサウナがどの様なものか知らない観光客にとってはパニックになりかねない熱さで、私も最初は何かの間違いではないかとビックリしました。フィンランド人の友人に「大丈夫だから落ち着け」と言われて我慢すると取り敢えずこれでも死ぬことはないとわかりました。しかし逆に慣れてしまうとこの熱さが病み付きになります。汗が滝の様に滴り、その後外で涼む、そしてまた汗をかきにサウナに戻るを1時間半から2時間程度繰り返します。その後はビックリするほどのサッパリ感と気持ち良さ。これは日本のお風呂にも通じる感覚なのですが、日本の暑い風呂に入った時の様な疲労感はなく、身体が軽くなった感じさえします。

私もすっかりフィンランドサウナにはまってしまって、滞在していた10日間のうちに4回も行ってしまいました。そのうち3回は1人サウナです。私がこの1人サウナを楽しんだのはコペンハーゲンの街中にあるサウナ (Kotiharjun sauna: コティハリュ・サウナ)で、出来てからもうすぐ100年経つ伝統的な公衆サウナだそうです。

この様な伝統的なサウナにはヴィヒタという白樺の葉が付いた木の枝の束が置いてあり(上の写真に写っている看板のマーク。一つがヴィヒタで、もう一つが焼け石に水をかける為の柄杓)、これで身体を叩いて血行を良くするのだそう。サウナで男同士が代わりばんこに木の枝で背中や身体を叩き合っているのを見て不思議そうにしているとと説明してくれました。せっかくだから頼んで体験してみると葉っぱがクッションになっていて、強く叩いて音も結構出ているのに痛くありません。美容院で美容師さんがシャンプー後に肩を両手で叩いてマッサージしてくれる時の気持ち良さです。フィンランドサウナにおいてこのヴィヒタは重要なもので、今では夏に白樺の木の枝を瞬間冷凍し保存して冬でも青々とした葉の付いたヴィヒタを提供しているそうです。

フィンランドサウナではもちろんサウナ自体の気持ちよさは素晴らしいものがあるのですが、それ以上に友人とサウナに行き、サウナの合間に涼みながらにビールを飲み世間話をするというのも大きな目的になっているみたいです。日本にも昔から「裸の付き合い」というように銭湯がもっと当たり前だった時代に友人と風呂に浸かりながら色々話すのが打ち解けた関係の証になっていたところがありました。その文化が色濃く残っているのがフィンランドサウナなのです。

フィンランドにおいてサウナはまさにこの国の日常文化を表す象徴の一つなのだと感じました。フィンランドを訪れた際は是非試してみてください。個人的には観光用のサウナではなく街中や郊外にある様な少し寂れたサウナがお勧めです。

とは言っても私もフィンランドサウナの初心者。フィンランドにはまだまだ様々なタイプのサウナが存在しています。これからも貪欲にフィンランドのサウナ文化を研究して行くつもりです。

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