マリ・ロシュニのアポクシュオメノスと砂の島のワイン

イロビックでの沈没船再調査の最終日に近くにある島のマリ・ロシュニという町に行ってきました。この町に来た目的はある博物館を見学するためです。この博物館は1996年に海中で発掘された銅像のために作られた博物館で、この銅像をアポクシュオメノスといいます。アポクシュオメノスは「拭う者」という意味で、身体を洗う裸の競技者(アスリート)を表し古代ギリシャと古代ローマにおいて銅像や大理石の彫刻の人気の題材でした。

このアポクシュオメノスの博物館は現在美術を彷彿させるつくりの美術館でした。

今回この博物館に考古学チームが訪れたのはたんに博物館に来たかったからではありません。このアポクシュオメノスは海中から単体で見つかりました。実はこれはかなり珍しいケースで、海中からこのような古代の芸術品が見つかる場合は沈没船遺跡と伴って発見されることがほとんどです。しかしながらこの銅像の発見当時、考古学者とダイバーがいくら周辺を操作しても沈没船は見つかりませんでした。つまりこの銅像はなんらかの理由で船で輸送中に海に単体で投げ捨てられたか落下したと考えられています。

このアポクシュオメノスの銅像から8キロ弱離れた場所で発見されて発掘されたのが今回私たちが再調査したイロビックの沈没船なのです。本来船が座礁して浸水し、船を軽くるするために積荷を投げ捨てた場合、単体ではなく多くの積荷を放棄するためにその積荷が海底に散らばることになります。しかしアポクシュオメノスの銅像は単体で見つかり、これが海難事故が原因で投げ捨てられたものだとしても、その沈没船は周辺では見つかりませんでした。

この銅像から約8キロ離れた場所で発見されたのがイロビックの沈没船です。これだけの距離が離れていると流石に銅像と沈没船の関連性は低いと考えられますが、銅像と沈没船はどちらも紀元前2世紀ごろのものと時代は一致しているのです。

このクロアチアで発見されたアポクシュオメノスの銅像はクロアチア国内と水中考古学では知られた発見でした。今回はイレーナ教授と友人のアメリカとイスラエルの水中考古学者がこの沈没船の再調査を持ちかけ実現しました。実際にしっかりとした発掘を行わないとイロビック沈没船とアポクシュオメノスとの関連性はわからないですが、今回再調査を行なったのにはこのような理由があったのです。

マリ・ロシュニからの帰りにスサックというクロアチアで唯一の砂でできた島を訪れました。

クロアチアには無数の島があるのですが、そのほとんどが石灰岩で出来ており、砂で出来た島は非常に珍しいのです。クロアチア人でもなかなかくる機会のないというこの島の名産はワインです。古い町中にはワインの蒸留所がありました。

私は相変わらずワインの味の良し悪しはあまりわからないですが、美味しかったです。堪能させてもらいました。クロアチアはイタリアに隣に位置し地中海沿岸の国なので美味しい地ワインがいたる町にあります。(美味しいビールもあります。)

そんな中でこの砂の島スサックではその砂地の特性を活かし葡萄を育てワインを作っているそうです。

そんなこんなで3日間の調査が無事に終わりました。すでに私たちは別の場所に移動しており、今日から今年発見されたばかりの貴重な古代船の調査を行います。

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