昨日4日間に渡る静岡県の初島での沈没船水中調査が無事に終わりました。日本での沈没船調査はとても珍しく、今回は非営利の水中考古学研究団体であるアジア水中考古学研究所(通称ARIUA)が主体となった水中調査でした。日本国内で長年活躍している先輩研究者方のお手伝いをさせてもらい、とても貴重な経験をさせていただきました。声をかけていただいた東京海洋大学の岩淵教授、プロジェクトを取り仕切った林原先生、小川上席研究員をはじめ、今回一緒に作業をさせていただいた皆様には本当に感謝です。
(こちらがアジア水中考古学研究所公式ウェブサイトになります。)
流石に12月の海!ドライスーツを着ながらも極寒でした。しかし水中は透明度もよく、天候にも恵まれ、ほぼ全ての作業を予定通りに行うことができました。
今回は私は初めての参加ということで、特にいつも行なっている実測作業などは行わず、水中遺跡の確認と掃除を主にさせていただきました。
初島の水中遺跡は17世紀から18世紀初頭の輸送船の沈没船遺跡で江戸時代に瓦を積んでいました。現在でも積荷だった瓦はほぼ当時のまま(積まれたまま)の位置を保った状態で海底に横たわっているのを確認することができます。
何よりも重要なのはこの瓦の下には未だに当時の船体木材が残っていることが確認できたということです。実はこれまで日本国内で行われてきた沈没船の発掘調査は中国船や韓国船、又は欧米船のものがほとんどで、純和船の発掘研究は(丸木舟などの調査を除き)今回の沈没船遺跡が江戸時代の船では唯一といえるのではないでしょうか?
私の専門研究分野は西洋船ですし、日本国内でもこれまで中国や韓国などを主とした東洋船の研究者の先生方は何人かいらっしゃるのですが、和船の研究となると一気に専門家の数が少なくなります。それほど私たちの和船について多くのことがわかっていません。それほど今回の和船の沈没船研究は学術的に貴重なのです。
今後この初島水中沈没船遺跡で様々な発掘研究が続けられれば、日本の伝統的な造船がどのような技術をもちい発展してきたかがわかってきます。
今回日本の先輩研究者たちに同行できたのはもちろん嬉しかったのですが、それと同時に水中考古学者を目指す若者たちと色々な話ができたのもとてもよい経験になりました。彼らが今後もこの学問を愛し、研究者を目指してくれるようにできる限り協力できたらとおもいました。日本国内はもちろん世界中で水中考古学者が足りていません。なので水中考古学者になりたいと言ってくれる若い世代がいることは本当に嬉しいことです。
初島が私にとっては4回目の日本国内での水中調査となったのですが、毎回感動するのが日本の民宿のご飯の美味しさ。毎日たらふく食べさせてもらい幸せでした。夕食が白米の幸せ。パン食が苦手なわけではありませんが、一年のうち約10ヶ月を海外のプロジェクトで現地の発掘チームと生活している私にとってこれほどの贅沢はありません。そして毎晩先輩研究者の方々と晩酌させていただきました。
とても楽しく充実した数日間を過ごさせていただきました。感謝!