今回はチューク諸島帰ってきて1週間日本に滞在することができました。
東京にも数日間滞在してアジア水中考古学研究所の連絡会に出席させていただいたり、学生時代の友人たちと久し振りに飲みに行ったりと充実した時間を過ごせました。
そして早速5月に開催されたスペインのマヨルカ島での水中発掘フィールドスクールで出会った皆さんと同窓会をしてきました。日本で会ってもやっぱり楽しかった。皆さんと会えたのがフィールドスクールでの1番の収穫です。そのうち5名はアジア水中考古学研究所の連絡会にも参加していただき、私のような水中考古学マニアを新たに発掘しています。
後半は実家のある米子に戻り、愛犬の茶太郎ちゃんとの時間を取ることができました。
基本的にはチューク諸島でとってきた5箇所の水中戦争遺跡のデータを処理していました。改めて少し紹介します。
零式艦上戦闘機(ゼロ戦)
中島C6N「彩雲」
(通称)「砲艇」水中遺跡
九七式軽装甲車
川西H8K二式飛行艇
これらの作成された3Dモデルは水中戦争遺跡の周知化、また劣化の経年変化を詳しく調べるためのモニタリングの基礎モデルとして活用されていきます。
この様に基礎(最初)のモデルがしっかりしていれば、今後は地元の文化財保護の担当者やダイバーの撮影した写真や動画から簡潔な3Dモデルを作成し、それが基礎モデルと比べてどの様な変化が起きているのかがソフトウェアで一発で可視化できるのです。この様に何処にどのような変化が起きているかが正確に分かれば、ピンポイントに水中遺跡の補強や立ち入り規制ができ、遺跡全体の保存処理や立ち入り規制といった大規模なことをしなくても優先準備を決め効率的に数多くの水中遺跡の現位置保存が可能になります。
さらにフォトグラメトリーという技術において注目していただきたいのが、今回は私一人が3日間(7回)のダイビングと10日間の処理期間のみで遺跡の5箇所の水中遺跡の3Dモデルと遺跡の実測図(テンプレート)を作成できた点にあります。例えばこれらの水中遺跡一つの正確な実測図を作成しようとしたら何人もの水中考古学者やダイバーが何週間もの時間をかけなければなりません(陸上の遺跡と違い水中遺跡は活動時間が制限されます)。これが今回のようにフォトグラメトリーを使用すれば1箇所の水中遺跡に対し1人の考古学者(ダイバー)と1日のダイビング、そして3日以下の陸上での処理作業で可能になるのです。ダイビングの人数と本数を減らせることにより経済的にもなり、短期間でより多くの遺跡で作業できるようになります。さらに3Dモデルは実測図の他にも断面図や等高線マップ、GISデータにも簡単に変換ができ、学術研究にも使用でき、また博物館やインターネットでの教育普及・展示用、また上で紹介したようなモニタリング用データとして様々な用途に活用できます。
しかしながら日本の考古学はまだデジタルデータや3Dモデル活用において後進であり、これらの効率的な道具の活用に対し保守的でもあります。私はしっかりと3Dデジタルデータの有効性をしめし、より多くの考古学研究者にフォトグラメトリーや3Dスキャンを活用としたデータ収集を行っていってもらいたいと思っています。もちろん考古学の基礎を学ぶ上では、学生はまずは何事も手書きで学び、遺跡のどこのどのようなデータをなぜ必要かという考古学者の目をしっかりと養ってからではないといけません。3Dデータはあくまで道具で、それを活用するのは知識を持った考古学者なのです。しかしながらしっかりと基礎を学んだうえならば、より効率的にデータ収集と研究ができる道具を使っていくことも重要だと思います。
とりあえず1週間充実した時間を過ごせました。今は次の仕事場のアメリカの空港にいます。
最終目的地まであと少し、でもキャビンアテンダントが1人足りないとのことで既に2時間の遅れでデトロイト空港で待ちぼうけ、あと1時間新しいキャビンアテンダントが見つからないとキャンセルになるらしいです。キャンセルならキャンセルでいいから早く決めてほしい。