現在クロアチアのコルチュラ島で水中考古学のための水中フォトグラメトリワークワークショップを開催しています。普段私が各国から依頼を受けて開催しているワークショップや集中講義は、陸上で「データの取り方」「データ処理の仕方」「そこから様々な研究用データへの返還」などを教えているのですが、今回はそれを水中に持って行きました。
参加資格は以前のワークショップで私の講義を受けたことのある考古学者。3週間ほど前の告知にもかかわらずクロアチア・スロバキア・フィンランド・オーストラリアから水中文化遺産に関わっている考古学者とプロダイバーが参加してくれています。
やはり陸上とは違い、水中でのフォトグラメトリでは様々な制約がかかり、陸上のものとは全く別物になります。そこで私がこれまでに様々なプロジェクトで見つけた裏技(技術)を1週間かけて他国の考古学者たちと共有することになりました。
こちらが水中でお手本を見せている私。白いお皿は白バランスを水中で調整するためにアパートからくすねてきたものです。(しっかり許可は取っていますし、作業後にしっかり戻しました)
こちらは朝の7時。朝食は8時からなのですが、既に何人かは早起きして練習中。結局、講師の自分が一番遅くまで寝ています。
そして驚いたのは今回の沈没船!凄い!
今回はワークショップのために10年前に一度クロアチア政府が調査を行った沈没船遺跡を使わせてもらっているのですが、19世紀の小型船と聞いていました。さらに報告書には今後調査する必要はなしとのこと。
しかしながら潜ってビックリ。19世紀の小型船だなんてとんでもない。
海底一面に広がるガラスと金属の塊。明らかに巨大な商船。大きさと積m荷の様子から推測するとおそらく17世紀。積荷の種類を見るとベニスから来たのでしょう。遺跡の状況から察するに嵐を避けて錨を下ろして停泊していた船が、それでもなんらかの原因で沈んだ様子。25mの海底に横たわっているのは明らかに下から2番目の甲板。船底部はまだ完全に埋まっています。これまでに盗掘者に荒らされた様子もありません。
ここには当時の造船技術と国々の交易を理解する上でとても重要な情報が眠っているのです。こんな重要な遺跡が今まで研究されていなかったなんてもったいない。しかし沈没船研究(造船史研究)を専門とする私たちにとっては未発掘の遺跡はとてもありがたいもの。まさかこんな沈没船を眼にするとは想像もしていませんでした。
コルチュラもまた静かで美しい場所。何度も戻ってくる場所になりそうです。ワークショップもあと2日、頑張っていきます。