「ふしぎ発見」取材裏話。

昨日放送された「日立 世界ふしぎ発見」に出演させていただきました。

放送後に沢山の方々に番組を見ての感想を頂戴しました。ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

まだまだ一研究者でしかない私が取り上げられるということで、身の丈に合わないというか、恥ずかしいというかで、今まで自分からテレビ出演の情報発信は全くしなかったのですが、素晴らしい番組にしてくださった番組制作会社の方々への感謝の意味を込めて、少しだけ取材当時のことを振り返り、裏話を紹介したいと思います。

最初に「ふしぎ発見」の番組制作会社であるテレビマンユニオンの冨田さんから連絡をいただいたのは今年の1月頃でした。

私は最近は海外での発掘調査関連の依頼をいただくことが多く、一年間で約2カ月弱しか日本に帰っていませんでした。その2カ月間の中でも教壇に立たせて頂いたり、共同研究をさせていただいたりで、日本国内での移動も多く、自分が自由に使える時間(実家に帰るのは)毎年2~3週間ほどです。

そんな中「日立世界ふしぎ発見」の番組制作を行っている番組のための様々な調査を行っている冨田さんに、私が水中考古学の面白さを一人でも多くの日本の方に伝えるために開設したこの水中考古学ウェブサイトとブログを見つけていただき、連絡をもらいました。そして今年の2月頃にちょうど東京での仕事が終わった後に直接お会いして、私が行っている造船史と沈没船研究がどの様なものかをお話させていただきました。その時は、出演依頼というよりは、「ふしぎ発見」が水中考古学という学問に興味を持っており、その研究内容を詳しく知りたいというものでした。

その後も冨田さんからは何度も連絡をいただき、水中考古学の面白さを日本の皆様に伝えるにはどの発掘調査を取り上げるべきかの意見交換を行ってきました。冨田さんは番組作成に必要な情報のリサーチなどを行っている情報収集の専門家で、さすが「ふしぎ発見」で調査を行っているだけあり「歴史研究者」顔負けの歴史の知識量で、私が海外で働いてる間でも様々な水中考古学の情報を交換させていただきました。

その後、たまたま私が7月の初めに日本に数日間立ち寄る機会があり、その時に冨田さんが、「ふしぎ発見」やその他さまざまな歴史番組やドキュメンタリー番組の最前線でディレクターとして活躍されている阿部さんを私と引き合わせてくれました。

私も水中考古学や文化遺産保護のことでは少し熱くなってしまいがちなのですが、阿部さんはもっと熱い方でした。人の心に残る・人のためになる番組を作るために情熱を燃やしており、私との温度もぴったりで、そんな話し合いの中で海外の水中考古学を日本の方に紹介するためにと選んだのが、私が長年働いているクロアチアでの発掘調査だったのです。

その後番組制作が正式に決まったのが7月の中頃。私のクロアチアでのグナリッチ沈船(ガリアナ・グロッサ)の調査が8月だったので、決定から異例のスピードでの取材となりました。短い期間で様々な準備をしてくださった冨田さんと阿部さんには感謝しかありません。

その後一カ月がたち、8月の中頃に「ふしぎ発見」取材チームが私が働いているクロアチアの現場にやってきました。「取材チーム」はディレクターの阿部さん、撮影の入江さん、音声の鈴木さん、アシスタントディレクターの村上さん、現地コーディネーターのパンドルフィさん、「ミステリーハンター」の華恵さんでした。

取材期間は4日間だったのですが「ミステリーハンター」の華恵さんとは撮影の合間の待ち時間などに水中考古学の話をさせていただきました。とても綺麗な方で、しかも日本人女性と話すのは久しぶりだったので緊張して4日間ずっとしどろもどろでした。番組でも私はカミカミで目が泳いでいたのが見て取れると思います。華恵さん、そして冨田さん(冨田さんもお綺麗な方なので、話すときは緊張しました。)気持ち悪くて申し訳ございませんでした。

私の気持ち悪さは横に置いておいて、華恵さんはとても不思議な魅力のある方でした。華恵さんが使う言葉はとても真っすぐで、真っ裸です。例えば、誰もが初めての他人や仕事仲間と話すときは、自分の思想をそこまで表に出さず、言葉が着飾っています。華恵さんの質問や発する言葉は全く着飾ってなく、いつの間にかこちらもアーマーを剥がされ、水中考古学に対する自分の思いを引き出されていました。私以外のクロアチア考古学者のメンバーも同じだったようで、彼女の発掘現場へ対する真っすぐな反応や対話には嘘がなく、そのおかげでクロアチアの発掘メンバーの誰もが素直に彼女からの質問に答えるようになっていました。ミステリーハンターってすごい方です。

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そして取材現場でも阿部さんは熱い方でした。情熱をもって番組を組み立て、その熱さが私たち発掘チームにも伝わり、発掘チーム全体が盛り上がりました。

実は阿部さんに会うまで、私は今回のテレビ出演はかなり不安がありました。今までにも何件かテレビ取材の依頼や、歴史番組関連の相談をテレビ局関係の方から受けました。全員ではないですが、どうしても多いのは沈没船という遺産の歴史探求というよりは、単なる宝探し。大体の質問は「この「お宝」は売ったらいくらになるのですか?」というものです。

それ以外でも、私は何度も日本のテレビ番組の中で芸能人の方々がトレジャーハンターの元に出向く番組を見たことがありました。それは「発掘」と称して雑に海底を掘り起こし、遺物の発見位置と状況の記録もせず、それを売って金銭的な値段で遺跡の価値を決めるという、ひどい内容の番組ばかりでした。そのせいで視聴者である皆さんにトレジャーハンターと考古学を似たものだと誤認させていました。私は歴史研究に携わる者として、このような番組の片棒をつぐことだけは絶対にしたくなかったので、何度も事前調査を担当していた冨田さんと話していても、実際に「現場監督」である阿部さんとあってお話をさせてもらうまでは不安なところもあったのです。

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しかしながらそこはさすが「ふしぎ発見」のディレクターさんというだけあって、阿部さんは取材前から歴史研究の重要さを理解し、それを視聴者の方の心に響くように伝えようと常に私以上に考えてくださっていました。阿部さんのおかげで私がクロアチアでの取材期間中にしたことは、「普通に普段通り働く」ことだけでした。私が普段通り働いていれば、阿部さんがしっかりとその意味をくみ取り、番組を通して日本の皆様に水中考古学を正しく伝えてくれるはずという信頼関係ができていました。

実はヴェネツィアで出演していた歴史文献学者のマウロさんも普段からテレビ嫌いを公言していました。誇りをもって仕事に命を懸けているマウロさんは最初は日本からの見知らぬテレビ出演を渋っていたのですが、阿部さんの情熱と真摯さに打たれ、出演を了承。そして実際の取材時には英恵さんの着飾らない真っすぐさに感銘を受けたといっていました。素晴らしい日本からの訪問者だったとべた褒めして、是非機会があれば彼らとまた仕事をしたいとまでいっていました。

マウロさんとは取材後にクロアチアで今年の発掘のデータの検証を一緒にするためにあったのですが、あんなにご機嫌に取材時のことを話すマウロさんは聞いているこっちまで嬉しくなりました。

クロアチアでの取材期間中は阿部さんや華恵さんだけでなく、撮影の入江さん、音声の鈴木さん、ADの村上さん、パンドルフィさんとも沢山話をさせていただきました。皆さん素晴らしく高い意識をもって仕事されているプロの集団でした。皆さんには仕事に対する姿勢や考えなどを聞かせていただき、たくさん勉強させてもらいました。夜は何度も一緒にお酒を飲ませていただいたのですが、とても楽しかったです。あまり日本語を使う機会のない私にとって、皆さんと出来た久しぶりの世間話は嬉しいものでした。

そして何よりも私が嬉しかったのは、「ふしぎ発見」の取材班がクロアチア発掘チームに対してとても真摯に向き合ってくれたことでした。けして発掘作業の邪魔をすることなく、私たちの仕事を遅らせることのないように細心の注意を払いながらの取材。そのおかげで私たちは普段通りに作業に集中できました。

取材チームが4日間の取材を終え帰った時には、クロアチアの発掘チームのみんなが寂しがっていたのがとても印象に残っています。もちろん私も寂しがっていたその一人でした。

小さい頃から見ていた「ふしぎ発見」に出演できたことは私にとって一生の宝物になりました。最初は「沈没船の発掘現場」の取材かと思っていたのですが、思った以上に「私」が取り上げられて少し驚きましたが、番組を見た両親がとても喜んでくれていたのでよかったです。

私も先ほど番組を見させてもらったのですが、水中考古学の意義と歴史の面白さをしっかりと伝えてくれる(自分でいうのも恥ずかしいですが、)素晴らしい内容になっていました。もし小学生の自分がみたらワクワクしていたはずです。

取材から2カ月半がたち、あれから私はまた様々な沈没船遺跡で働かせていただいています。現在は中米のコスタリカで17世紀デンマーク船の水中調査を行っています。この沈没船は奴隷貿易に使用されていた船で、デンマークとコスタリカにとってとても重要な歴史を抱え持つ船です。

現在のように私が世界各国で働かせていただいているのは、その研究対象が「船」だからです。「海」は人々を隔てる場所ではなく、繋ぐ場所でした。そして「船」は場所と場所、人と人を繋ぐ「架け橋」だったのです。

この貴重な「沈没船」という人類の痕跡が世界各地ですごいスピードで発見されています。それに対してそれを発掘研究できる水中考古学者の数がまだ圧倒的に少ないのです。いま私たちは更なる若い世代の水中考古学者の登場を待ち望んでいます。将来、今回の「ふしぎ発見」をみたのが水中考古学者になるきっかけになったといってくれる若者が現れてくれることを願っています。

もちろん水中考古学の研究対象は「沈没船」だけではなく、考古学全ての遺跡が水中遺跡になりえるのです。私は「西洋船の造船史」の歴史研究者なので海外の沈没船調査から依頼が来るのですが、日本国内でも多くの先生方や研究者の方々が様々な考古学遺跡で水中考古学研究を行っています。研究の質や量も年々濃くなってきており、様々な教育機関で生徒の受け入れ態勢が整いました。(まだ数は少ないですが。)

アジア水中考古学研究所の林田会長、東京海洋大学の岩淵教授や林原先生、東海大学の木村先生、九州国立博物館の佐々木先輩、ハーマン号研究の井上たかひこ先輩、琉球大学の池田教授、民博の小野先生、沖縄県立博物館の片桐さん、大阪教育委員会の中西さん、琵琶湖研究の中川さん、京都水中考古学研究所の吉崎さん、そしてその他にも多くの先輩研究者とその研究に関わる方々、そして日本の水中考古学を学問として切り開いてきた先人先生方、
多くの先生と研究者が様々な分野で日本の水中考古学研究を支えています。

今回はたまたま「西洋の沈没船」という題材のため海外で「船舶考古学」を専門としている私の研究を取り上げていただきましたが、日本にも沈没船遺跡以外にも様々な文化遺産が水中に眠っているのです。

最後に改めて、「ふしぎ発見」取材チームの皆さんをはじめ、エンドロールに名前の載った全ての関係者の皆さんに感謝申し上げます。番組でトレジャーハンター=盗掘者であること、彼らの起こす問題をしっかりと伝えてくださいました。今回の放送が日本の水中遺跡保護に与えてくる影響は大きいと信じています。

普段は裏方に徹している皆様ですが、感謝の意味を込めて、皆さんとの思い出を、ここに勝手に書かせていただきました。「水中考古学」を題材として取り上げていただき、本当にありがとうございました。

私も今回の「テレビ出演」で増長したりせず、引き続き日本と世界の水中遺跡研究と保護のため頑張っていきます。

皆さま、今後とも日本の水中考古学をよろしくお願いします。

山舩

2 thoughts on “「ふしぎ発見」取材裏話。

  1. 私もふしぎ発見見ました。
    水中考古学が日本にさらには、学生にどんどん広がってほしいです。
    日本にも沈没船があると思いますが日本でも是非活動、水中考古学普及活動をよろしくお願い致します。🤲

  2. 毎週「ふしき発見」は録画し、見ていますか、今週のテーマは、山船さんの人となりとともに心に残るものでした。ご健康とますますのご成功をお祈りしています。

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