大事なことなので。日本の水中考古学研究者達について。

こちらは実家の階段で私が階段を上がるのをじっと待っている茶太郎ちゃん。私が上から3段目ぐらいの位置に行くと飛びかかってきます。(イッヌの呼吸、捌ノ型「忠犬擬態」)

日本に帰ってきてから数日が経ちました。意外とやることが多くて全然休めていません。無念!

実家に入れるのも後1日、短い!

しかし最近ご近所の方々からテレビ見たよーと言われて、ようやく人気番組の「ふしぎ発見」に出させていただいたのだと実感がわいてきました。正直、数日前まで海外にいたので全く自覚がありませんでした。出演後は地元の友人から冷やかしのメールが届いたぐらいでした。(これは結構多かったのですが、いつも連絡が来ていた野郎どもだったので気になりませんでした。)

多くの方から「これからも頑張ってね」とあたたかい声援もいただきました。

その中で少し気になったことがあるので、今回はそのことを是非とも皆さまと共有させてください。

今回はたまたま「西洋船の沈没船」、「海外」、「3次元測量(フォトグラアメトリ)」という理由で、番組の題材に合った私が取り上げられることになりました。しかし皆様に是非知ってもらいたいことは、日本国内には私よりも長い間水中考古学を研究をなされている優秀な水中考古学研究者の方がたくさん存在しているという事実です。

水中考古学の研究対象はもちろん「沈没船」だけではありません。水没した先史時代の遺跡や湖に沈んでしまった居住地跡などが沢山あります。水中考古学は考古学の一部であり、遺跡が水中で見つかれば、それは水中考古学といわれることもありませが、基本的には考古学です。なので考古学の全ての研究は水中考古学になりうるのです。

なので私たちの研究対象はそれぞれ違うのですが、水中考古学研究者たちは密接に連絡を取り、協力しながら日本の水中考古学発展のために頑張っています。そして多くの先輩研究者の皆様は既に20年以上、私が子供のころから地道に、そして確実に日本の水中考古学のために研究を続けていらっしゃるのです。

改めてお伝えしたいことというのは、今回はたまたま私が取り上げられましたが、日本にもたくさんの水中考古学研究者の方々がおられること。これらの先輩研究者の方々は水中考古学発展のために長年の努力をしてくださっているということを是非知っていただきたかったのです。(言わされているわけではありませんからね(笑)。テレビ出演が理由で私だけが注目されることに少し違和感を覚えただけです。自分の研究が注目されるのが嫌なわけじゃありませんが(むしろ好きですが)、他の研究者の様々な研究にもスポットライトを当ててもらいたいと感じました。ただ「西洋の沈没船」「遺跡の三次元測量(フォトグラアメトリ)」であればお任せください!)

近所の方々の反応を見て、予想以上に多くの皆様に番組を見て下さってもらっていたことに気づき、どうしてもこの点だけは皆様に誤解なくお伝えしたくここに書かせていただきました。(私は日本に多くいる水中考古学研究者の一人なのです。全然日本にいないですが(笑))

  

  

わたしが直接お世話になっている先輩研究者だけでも、

長年日本の水中考古学研究を引っ張ってくださっているNPOアジア水中考古学研究所( http://www.ariua.org/ )の林田会長。

私が特にお世話になっている東京海洋大学の岩淵教授(アジア水中考古学研究所理事)と林原先生。 日本の水中考古学に歴史と現状に精通しています。 東京大海洋大学は現在の日本で唯一大学院として水中考古学のプログラムが併設されています。

東海大学の木村先生。東アジアの造船史の第一人者です。友人です(だと私は勝手に思っています!)。ちなみに私はアジアの船についてはチンプンカンプンです。私の船の知識をギリシャの神殿と例えるなら、木村さんの研究は「中国のお寺」。同じ船という構造物でも場所と時代が違えばこのように研究に必要な知識が全然違がってきます。アジアの船なら木村さんです。(そのかわり西洋船だったら私に任せてください)

ハーマン号研究の井上(たかひこ)先生。井上先生は多くの水中考古学関連の書物を出版しています。専門書から入門書まで書いていらっしゃる水中考古学の伝道師です。「水中考古学への招待」「水中考古学」などが代表作ですが、本当に多くの本を書いていらっしゃいます。

九州国立博物館の佐々木さん(ランディさん)。水中考古学研究のウェブサイトを運営しています。 https://www.nauticalarchaeologyjp.com/
ツイッターでも世界の水中考古学のニュースなどの情報を発信しています。
https://twitter.com/Nautarch_japan
佐々木さんも 「沈没船が教える世界史」というとても読みやすい水中考古学の入門書を出版なされています。お勧めです。是非。

井上先生と佐々木さんは私の大学院の先輩でもあります。

元寇船の発掘プロジェクトで知られている琉球大学の池田先生。池田先生が元寇船を発掘研究したことによる日本の水中考古学への貢献度は計り知れません。

国立民族学博物館の小野先生。(最近まで東海大学で教鞭をとっていらっしゃいました。)私が参加させてもらった石垣島でのプロジェクトリーダーが小野先生です。

沖縄県立博物館の片桐さん。日本で(沖縄県を中心に)一番水中遺跡の分布調査を行っているのは間違いなく片桐さんです。

大阪教育委員会の中西さん。様々な方法で水中考古学の教育普及活動を行っています。

琵琶湖研究の中川さん。琵琶湖の水中遺跡研究の専門家で、琵琶湖の水中遺跡関連では中川さんの右に出る研究者はいません。

京都水中考古学研究所の吉崎さん。以前にNHK主体の中東の素晴らしい水中発掘プロジェクト(海のシルクロード)に参加しており、現在でも京都で研究を続けられています。

その他にも多くの先輩研究者とその研究に関わる方々。そしてなにより日本の水中考古学を学問として切り開いてきた先人先生の方々。日本の水中考古学の歴史は知られていないだけで濃密でとても長いのです。

嬉しいことに日本国内外(留学組を含め)でも水中考古学を目指す若者が確実に育ってきています。水中考古学を助けてくれているダイバーの皆様やカメラマンの皆様も着実に増えています。

さらに九州大学の菅先生や東海大学の坂上先生など、日本を代表する工学系の専門家の先生方も日本の水中考古学の限界を広げてくれています。

本当にここに全ての多すぎて全ての方々の名前を書くことが出来ないのが心苦しいです。

  

改めて、今回はたまたま「西洋の沈没船」という題材のため「海外」で「船舶考古学」を専門としている私の研究をテレビで取り上げていただきました。しかし日本にも優秀な水中考古学研究の研究者の方々が存在し、一丸となって頑張っていることをより多くの方に伝えたいと思いこの文章を書かせていただいています。

1人の研究者が出来ることなんて限られています。なので皆様には他の水中考古学者の様々な研究にも是非興味を持っていただき、日本の水中考古学の底上げに協力してもらいたいのです!

願わくはこれからも可能な限り、より多くの皆様と協力し、日本の水中考古学の発展を加速させたいと考えています。まだまだ若い研究者の数も足りていません!これからの日本の水中考古学をよろしくお願いします。

私も引き続き頑張ります!

 

 

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