東京開催のワークショップが無事に終わりました。

東京で開催されたワークショップが無事に終了しました。

本来は4月に開催予定だったこのワークショップもコロナの影響を受け2カ月延期。2カ月も遅れてようやく6月に開催することが出来ました。

今回のワークショップは申し込みが多かったため週末コースと平日コースに分けさせていただきました。実はその他にも大手の測量会社さんからこれら2つのコースとは別に、社員さん7名へのワークショップもさせてもらいました。週末コースと平日コースがそれぞれ10名だったので、27名へフォトグラメトリの技術指導をさせていただきました。

国内でのワークショップは2回目、以前に私が共同研究をさせていただいている九州大学で8名ほどの生徒さんと地元の研究者の方々にワークショップをさせていただいたので、これで国内では35名ほどに技術を伝えることが出来たのではないかと思います。(それとは別にミクロネシアでは水中フォトグラメトリの指導を水中考古学フィールドスクールでも行ってきました。こちらは水中でのフォトグラメトリに特化したフィールドスクールです。)

今回はせっかくなので私が4日間でどの様なことを教えているのかを紹介させていただきます。

1日目

・フォトグラメトリ方法論のレクチャー
フォトグラメトリをただの3Dモデルで終わらせるのではなく、どの様に使えばいいのか、この技術の特性とケーススタディを使いながら、参加者がフォトグラメトリの技術を学んだあとの可能性を伝えました。

・写真撮影の方法とカメラセッティング
フォトグラメトリは写真撮影ではなく光学のスキャンシステムです。そのため3Dモデルをしっかりと最大限の精度でつくるためのカメラのセッティングと撮影方法を教えました。

・最初の3Dモデル
ソフトウェアを使って、それぞれが撮影した写真からまず3Dモデルを作ってみました。

・3Dモデルの最大精度にするためのワークフロー
簡単に3Dモデルを作れてしまうのがフォトグラメトリの良いところであり、最大の欠点でもあります。誰にでも3Dモデルが作れてしまうがため、数回フォトグラメトリを行った人の多くが自分がマスターしたと勘違いしてしまいます。
しっかりと測量データとして3Dモデルを作成するにはフォトグラメトリのソフトウェアを理解して使いこなさなければなりません。そのため1日目にしっかりと精度の悪いカメラ位置の再計算の仕方や、メッシュやテクスチャの精度のあげ方など、私が普段から使用しているワークフローを伝授しました。

・高画質画像とPDFファイルの書き出し方法
3Dモデルの様々なデータシェアの方法を学びました。


    

2日目

・ビデオ動画からの3Dモデル作成
ビデオ動画からの3Dモデル作成方法を学びました。ビデオ動画から3Dモデル作成するときの難点と利点をしっかり学び、それに対処しながら精度を最大限にする撮影方法とソフトウェアの使い方を学びました。

・360度を包括する3Dモデル作成
当然ながら対象物を床に置いたら、その対象物と床の接地面は3Dモデルになりません。そこでどの様に効率的にマスキングという機能を駆使して、対象物のどの面もを包括した3Dモデルをつくるかの方法論も練習し、その後各自での写真撮影から360度包括の3Dモデル作成方法を行いました。これは主に遺物など使われる重要な技術です。

・スケッチファブの使い方
作成した3Dモデルのシェアが可能で、VRやARも簡単にできるスケッチファブへのアップロードの仕方や簡単な操作方法を学びました。


    

3日目

・考古学遺跡や町などの広範囲の3Dモデルの作成の仕方
広範囲の遺跡を3Dモデルにするにはどの様に撮影しなければいけないか、その方法論を学び、実際に遺跡現場を見立てたミニチュア遺跡で撮影方法を学びました。またドローンや水中ドローンでこれらをするときのコツや注意点も伝えました。

・位置情報を持った実物大の3Dモデルの作成方法
作成した3Dモデルへどの様に寸法データを与え、さらに座標データを組み込み、3Dモデルもソフトウェア内で管理と移動を行うかを学びました。

・さまざまなトラブルシューティング
私がこれまで様々な方から受けた質問から、良く起こるソフトウェアやその他の問題とその解決の仕方を伝えました。

・簡易アニメーションの作成
フォトグラメトリのソフトウェア内での作れる簡易アニメーションの作り方とコツを教えました。


     

4日目

・その他のフォトグラメトリのソフトウェア
講習で使ったAgisoft Metashapeの他にどの様なフォトグラメトリのソフトウェアがあるのかを紹介し、特にRealityCaptureというソフトウェアは実際の使い方と共に、Metashapeとの相違点や利点を伝えました。

・水中でのフォトグラメトリ
陸上でのフォトグラメトリと水中でのフォトグラメトリの相違点や、考えなければならない環境の違いや機材の使用方法、水中撮影のコツなどを教えました。

・測量データの作成方法と使用方法
3日までで作り方を学んだ実物大で位置情報を持った3Dモデルから様々な測量データの作成方法や使い方を学びました。具体的には、
① 3Dモデルからの寸法の取り方
② 位置情報を持った超高画質オルソモザイク写真の作成方法
③ オルソモザイク写真から遺物の実測図の作成方法
④ 3Dモデルから精密に形を表した遺跡の実測図の作成方法
⑤ DEM(デジタルエレベーションモデル)の作成方法
⑥ 等高線(等深線)の作成方法
⑦ 等高線(等深線)を持った遺跡の実測図の作成方法
⑧ 遺跡(遺物)の精密断面図の作成方法
⑨ 3Dモデルを使用した経年変化の計測方法

これらをフォトグラメトリのソフトウェアや他のソフトウェアを使いながら私が用意したエクササイズファイルを使いながら学んでいきました。  



    

こうやって書き出してみると、かなり濃密な内容です。一日7時間、計28時間でも足りないぐらいでした。

参加者の皆さんには、講義中にしっかりとノートを取っていただき、この講義後もしっかりと各自で学んだことを実践できるように、各自でのマニュアル(説明書)づくりを心掛けていただきました。

今回のワークショップも参加者は良い方ばかりで、和気あいあいと協力しながらいい雰囲気で作業できました。それぞれ講義終了後の1日に懇親会も行い、いろいろな話をゆっくりと出来たのも楽しかったです。

皆さんには今後も協力しあいながらフォトグラメトリを頑張っていってもらいたいです。

   

   
今週末からは大阪でのワークショップ開催。そして7月半ば福岡開催です。どんな方と一緒にフォトグラメトリをできるのか楽しみです。

東京で参加した方や、大阪と福岡で申し込んでいる方の傾向を見ると、測量会社や考古学関係の方が多くいます。これはかなり嬉しいこと。フォトグラメトリを一般化するには一部のスペシャリストではなく、多くの企業に事業としてフォトグラメトリを使ってもらうのが一番です。

学生の参加もありますが、まだまだ少ないです。しかしながら各会社で事業になればフォトグラメトリを使える学生の就職先もできるはず。そしてこれらの測量会社と考古学経験者を一気に水中考古学に引き込みます!日本の陸上の考古学関係者を一気に水中へ!

計画は順調。

とりあえず東京出張ではかなり体力を削られたので、数日間はゆっくと茶太郎ちゃんに癒されておきます。

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