前回のブログ投稿からまた時間がずいぶんと経ってしまいました。とりあえず私は元気に生きています。
最近はありがたいことに研究や機材開発に加え、講師・講演・執筆・水中考古学関連の取材など、とても忙しく働かせていただいています。ただそのせいで過労でふらふらになったり、頼まれた仕事が終わらなかったりと、多方面に迷惑をかけてしまっています。
(関係者の皆様申し訳ございません。)
日本に帰って(閉じ込められて)から一年以上たちますが、なぜ最近は国内でもこんなに忙しく慌ただしいのだろうと考えたとき、特に感じるのがSDGsという大きな社会の流れ。
Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)は2030年までに世界共通で目指すべき目標とされ、設定された17のゴールをさします。
なんと、なんと、その中に2つの目標に水中考古学関連の項目があるのです。
それは、、、、

11.住み続けられるまちづくりを
11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
14.海の豊かさを守ろう
14.7 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
ここでは詳しく述べられてはいませんが、重要なのは各国の定義する海洋資源(Marine Resouces)にしっかりと水中文化遺産(Maritime Cultural Resouces)も含まれているということ。そして国連関連機関のUNESCOもしっかりと水中文化遺産の研究と保護がSDGs14達成の必要と述べています。
*ちなみに多くの国(言語)で海洋資源とは「水産資源」「海底鉱物資源」そして「海洋文化資源」を示します。
また、
4.質の高い教育をみんなに
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
の項目でも、水中考古学はSDGsとリンクしており、この様な社会的背景もあり、私も日本国内の研究機関や民間企業と、文化遺産を守るための様々な取り組みや開発をさせていただいています。
茶太郎ちゃん(愛犬)でもわかるように要約すると、「水中文化遺産を守り研究することがSDGsの達成(持続可能な世界の創生)にも繋がる」のです。

また近年、先輩考古学者の方々の努力もあり、新たな「考古学ブーム」の波を感じています。
これもSDGs 11.4が少なからず影響しているのでしょう。
主に「エジプト考古学」や「城郭考古学」が大人気ですが、
「水中考古学もこの流れに便乗出来ているのでは!!??」
と感じる今日この頃。このご時世なのであまり大っぴらにはしていませんが、多くの講演会や取材などの依頼をいただき、私も水中考古学・船舶考古学という学問をより多くの方に知っていただくために活動させていただいています。

私は考古学研究者として、一つの信念をもって仕事や研究活動をしています。それは
「歴史を学ぶことが人類の未来を照らしてくれる」
というものです。ただこれはそんなにたいそうなものではありません。
こう考えてみてください。
「人類」を一人の「人間」、「歴史」を一人の人の「経験」に置き換えたら、歴史が私たちにとってどれほど重要なものかなんとなく理解してもらえるのではないでしょうか。
私たち「人」は、「過去にこんな経験があった。」「こんな失敗をして、学ぶことができた。」「こうしたおかげで上手くいった。」など、しっかりと過去の経験から学び、判断力や生活を豊かにすることができます。経験豊富な人間は魅力的ですよね。
つまり、「過去から学ぶことのできる人」が、「経験豊富な賢い人」と呼べるのだと思います。
逆に「過去の経験から何も学べない人」「同じ失敗を繰り返す」人は、賢い人とは言えません。過去の経験を生かせない人は愚か者ともいえます。
そして「人」にとっての「経験」が、「人類」にとっての「歴史」と私は考えています。
現代社会では一般的に「医学」や「工学」に比べて役に立たないと思われがちな「歴史学」や「考古学」ですが、「歴史」を「経験」として考えたとき、歴史学や考古学は、私たちの世界を豊かにするには必要不可欠な学問なのです。
この様にあてはめると、歴史学(文献)は「日記」であり、考古学(遺跡)は「写真」です。
人と同じように人類も時が経てば「過去」の記憶をどんどん忘れていってしまいます。なのでしっかりと過去の経験の証拠である「日記」や「写真」を残すための努力をしなければなりません。
また、これらがしっかり残っていることにより、困ったときや悩んだときにそれを見て「過去の経験」と向き合い、またその経験にどのような意味があったのかを学ぶことができます。
私たちの社会の未来をより良い方向に向かせるために「文化遺産」は必要なのです。
難しいことは抜きにしても、単純に昔の写真をみたりするのはエンターテイメントとしても楽しいですよね。さらに知らない写真を発見することはワクワクします。浪漫があります!

話が長くなりましたが、「よくわからないけどSDGsを実践してみたい!」という皆様は、是非「水中考古学」に注目してみてください。楽しいです!
宜しくお願い致します!