2019年-2020年 チューク諸島(旧トラック諸島)水中戦争遺跡保護のための水中考古学フィールドスクール

2019年8月

 

ミクロネシア連邦チューク諸島(旧トラック諸島)
戦争遺跡保護のための水中考古学フィールドスクールのご案内

 

1. 概要

2019年12月~2020年1月の年末年始、ミクロネシア連邦のチューク諸島(旧トラック諸島)に所在する太平洋戦争の水中戦遺跡にて、遺跡保護を目的とした水中考古学のフィールドスクールを開催します。

このフィールドスクールでは、世界の考古学遺跡において情報記録手法の主力となりつつある最新の3次元実測技術「フォトグラメトリー」の習得に重点を置いた実技演習を行います。

 

2.期間:2019年12月29日(日)~2020年1月4日(土) 計7日間

 

3.対象:20歳以上の社会人ならびに学生

 

4.主催・運営(お問合せ先):合同会社アパラティス

代表社員  山舩 晃太郎
所在地  鳥取県米子市岡成186番地
電話・FAX  0859-30-2033

 

5. 講師陣

・主講師:山舩 晃太郎 (ヤマフネ コウタロウ)
{合同会社アパラティス 代表社員、
海事考古学博士(テキサス農工大学:Texas A&M University)}

・副講師:Bill Jeffery (ビル・ジェフリー)
{グアム大学 助教授、海事考古学博士 (James Cook University)}

 

6.参加費(旅費を除く):17万円(消費税別)

*参加費に含まれるもの:講義受講料、実技指導料、宿泊費、朝食代、ダイビング費用(ボート代込み、計5回予定)、期間中の現地移動費。

*昼食及び夕食の代金は島内のレストランにて各自注文に応じてお支払い下さい。

*ダイビング機材のレンタルが必要な方は別途で2万円の機材レンタル費が必要になります。

*現地集合・現地解散です。日本と現地の往復航空券は各自でご購入ください。

 

7.本フィールドスクール開催の背景と目的

・戦後75年を迎え、私たちの意識の中には戦争という言葉の響きが徐々に遠いものになってきました。こうした状況の中でも戦時の状況を生々しくも克明に伝えてくれるのが「戦争遺跡」です。

太平洋に浮かぶミクロネシア連邦のチューク諸島はかつてトラック諸島と呼ばれ、太平洋戦争時は旧日本帝海軍の重要な軍事拠点でした。その軍事拠点は1944年にアメリカ軍の大規模空襲によって壊滅的な被害を受けました。この史実は「日本側のパールハーバー」として知られ、現在確認されているだけでもチューク諸島周辺に沈む戦争遺跡はその数が500カ所を超えるといわれています。

現在のチューク諸島は欧米から訪れるダイバー達の間で「沈没船ダイビングの聖地」として人気のダイビングスポットとなっています。しかしながら日本人の間ではこのチューク諸島の貴重な「水中戦争遺跡」の存在はあまり知られていません。

そのような中、2018年にミクロネシア連邦がユネスコの水中文化遺産保護条約を批准し、国としてチューク諸島の旧日本帝国軍の戦争遺跡を含む水中文化遺産を次の世代に残していこうという活動が始まりました。因みに本フィールドスクールの主講師である山舩晃太郎博士はこの活動にアドバイザーとして参加しています。

このような状況を踏まえ、旧日本軍の戦争遺跡の保護を現地の人々に任せきりにするのではなく、日本人としてもこれらの遺跡の保護に貢献するために、その一環である遺跡モニタリングのための精密3次元モデルデータを、フィールドスクールのカリキュラムの中で作成する。そのことが開講の主な目的になります。

・近年の水中探査技術の発達とそれによる成果が奏功し、日本国内でも水中考古学が徐々に注目されるようになってきました。そして、今後、多くの水中遺跡が発見され、当該遺跡の調査と整備が行われていくと考えられます。しかしながら我が国の水中考学界においては、実際に潜って考古学的な調査のできる研究者やダイバーの絶対数が不足していると言わざるを得ません。

またレジャーダイバーを含む一般の人々の間では「水中考古学」が学術研究分野として正しく理解されているとは言えません。今後、我が国の水中考古学の一層の発展を図るには「水中考古学」を正しく理解している研究者、ダイバー、一般の方々を多数輩出する必要があります。その一助とするために本フィールドスクールを開催します。

 

8. 本フィールドスクールの特長

1) 経験豊富な講師から「フォトグラメトリー3次元測量」の技術を学ぶことができます
本フィールドスクールでは「フォトグラメトリー」という最新の3次元実測の技術を参加者に学んでいただきます。フォトグラメトリーは現在世界中の水中考古学の現場で使われている技術であり、短時間で実物のような精密な3Dモデルを作成することができ、またそのためのソフトウェアも2万円程度ととても安価です。このフォトグラメトリーによって作成された3Dモデルを活用したモニタリングは様々な水中・陸上の遺跡に適用することができ、遺跡を保護し次の世代に考古学遺跡を引き継いでいくための新たな方法として徐々に世界中の重要な考古学遺跡で使われ始めました。

今回のフィールドスクール主講師である山舩晃太郎博士はフォトグラメトリーを活用した考古学研究の第一人者として、これまでに世界19ヵ国66カ所の遺跡の3次元測量を行いました。そしてこれらの現場で培った技術や獲得した知見を、世界11ヵ国の大学や研究機関から依頼により、計17回以上の集中講義やワークショップを通じて提供してきました。今回はその技術・知見を7日間のフィールドスクールにおいて余すことなく伝えていきます。フォトグラメトリーは要領さえわかってしまえば習得の容易な技術です。コンピューターや写真の初心者の方でも安心して取り組んでいただくことができます。

2)我が国の(陸上)考古学研究者を主たる対象とする講座です
近年日本でも学生が水中考古学を大学や大学院などの教育機関で学べる機会が徐々に増えています。しかしながら、これらの大学・大学院生以外には「学べる場」が無いのが実情です。

水中考古学は陸上の考古学の延長線上にあります。そして日本国内では多くの考古学研究者が各都道府県の埋蔵文化財課等に所属し連携して研究を行っています。陸上考古学の分野の豊富な知識と経験を有し、現場で活躍している考古学研究者に水中記録作業を経験する機会を提供することができるのがこのフィールドスクールの最大の特長です。

3)水中考古学を学んでみたい大学生・大学院生も参加いただけます
水中考古学を卒業論文のテーマに選ぼうとしている大学生や、これから大学院でこの学問を学んでみたいという若い研究者・学生に最新の水中考古学の現場を体験していただくためにもこのフィールドスクールを開催します。

4)水中遺跡の研究支援を行うダイバーにも有益なカリキュラムです
遺跡はアクセスの悪い水中に所在するため、水中遺跡の保護保存と研究を推進するには、地元で活動しているダイバーの協力が不可欠になります。海外ではダイバーがどのように考古学研究者と連携して水中遺跡の保護や研究をサポートしているかを日本のダイバーの皆様に伝えていきます。

5)歴史と考古学に関心を持つ一般人にも門戸を開放します
考古学と歴史学に興味を持つ一般の方にもこの門戸を開き、水中考古学の楽しさを体験し、重要さを学んでいただく場とします。歴史や遺跡は研究者、学術機関や政府だけのものではなく、人類共通の宝物です。今回のフィールドスクールでは職業や経験などによる参加制限は撤廃し、興味をお持ちのすべてのかたに最先端の水中考古学を経験する機会を提供します。

6)安全・安心です。
チューク諸島には500以上の水中戦争遺跡が存在します。参加者のダイビング技術に合わせてグループ分けし、各グループに適した水中撮影(フォトグラメトリー)対象の水中戦争遺跡を選定します。

チューク諸島は比較的波が穏やかで水深10m以下の浅い遺跡もあるので、ダイビング経験の少ない方でも安心して参加いただけます。ダイビング上級者には水深20m以上の場所にある水中遺跡での作業も予定しています。

 

9.日程表

1)主要な行事とカリキュラム

月日(曜日)

午 前

午 後

12月29日(日) ・現地到着
・ホテル送迎(注1)
・ホテルチェックイン(~12:30)
・開校式(15:00~)
・講義①「戦争遺跡と遺跡のデジタル保存」
12月30日(月) ・チェックアップダイビング
(零戦水中遺跡)
・実技講習①「初めてのフォトグラメトリー3次元測量」
・講義②「チューク諸島の歴史と太平洋戦争」
12月31日(火) ・水中遺跡データ撮影(写真) ・水中遺跡データ撮影
(ビデオ動画)
1月1日 (水) ・実技講習②「考古学遺跡のフォトグラメトリー」

 

・実技講習③「ビデオ動画からのフォトグラメトリー」
・実技講習④「作成した3次元モデルをシェアする」
1月2日 (木) ・水中遺跡データ撮影①(保存保護・モニタリング用) ・水中遺跡データ撮影②
(保存保護・モニタリング用)
1月3日 (金) ・実技講習⑤「3次元モデルを活用した遺跡のモニタリングと保護」

 

・無人島へのフィールドトリップ・キャンピング(コテージで1泊)
・お別れ会(BBQ)
1月4日 (土) ・講義③「これからの水中考古学」
・閉講式(11:00~12:00)
・解散
・空港送迎(12:30発)(注2)

 

(注1)グアム9時20分発チューク諸島11時5分着の便で到着の方は、12時頃にホテルへ送迎します。

(注2) 1月4日の飛行機は16時20分チューク諸島発、17時55分グアム着です。

 

 

2)タイムテーブルの例

 【事例① 12月30日(月)】

・8時~9時:朝食
・9時30分~12時:チェックアップダイビング
・12時30分~14時:昼食
・14時30分~18時:実技講習①「初めてのフォトグラメトリー3次元測量」
・18時~19時:講義②「チューク諸島の歴史と太平洋戦争」
・19時~21時:夕食

 

【事例② 12月31日(火)】

・8時~9時:朝食
・9時30分~12時:水中記録作業(写真データ)
・12:30分~14時:昼食
・14時30分~17時:水中記録作業(ビデオデータ)
・19時~21時:夕食
・21時~25時:忘年会・新年会(自由参加)

 

【事例③ 1月3日(金)】

・8時~9時:朝食
・9時30分~12時:実技講習⑤「3Dモデルを活用した遺跡のモニタリングと保護
・12:30分~14時:昼食
・15時~無人島でキャンピング(コテージで1泊)
・19時~22時:BBQとお別れ会

 

10.講義や実技講習の概要

・講義

計3回の講義形式の授業では主に太平洋に眠る戦争遺跡の状況と、世界中の水中考古学者達が戦争遺跡に対しどの様な研究と保護活動を行ってきたかを紹介していきます。

講義①「戦争遺跡と遺跡のデジタル保存」
この授業では、今回のフィールドスクールへ参加した皆様が作成するデジタル3Dモデルがどの様に戦争遺跡のモニタリングと保護に活用されていくかを紹介します。また他国での水中考古学で行われてきたフォトグラメトリーを使用した水中考古学の研究事例も見ていきます。

講義②「チューク諸島の歴史と太平洋戦争」
太平洋戦争と水中戦争遺跡研究の世界的な権威であるグアム大学のビル・ジェフリー教授から、チューク諸島における太平洋戦争の歴史と、これまで同氏がチューク諸島を舞台に取り組んできた水中考古学研究の成果を紹介していただきます。この講義は日本語同時通訳付きです。

講義③「これからの水中考古学」
参加者の皆様がフィールドスクールの得たデータ収集・処理技術やダイビング技術を使い、今後どのように日本の、また、世界の水中考古学研究に携わっていくべきかを紹介していきす。

 

・実技講習

計5回の実技演習を通し、フォトグラメトリーの技術を学んでいただきます。実技講習はハンズオンで行われ、参加者の皆様には写真撮影からデータのプロセスと、そのデータの活用の仕方を習得していただきます。今回学んでいただいた技術は水中遺跡だけでなく、様々な陸上な遺跡や遺物の3次元実測(3Dスキャン)としても活用していただける内容になっています。

PCとフォトグラメトリーに使用するソフトウェアはフィールドスクール主催者側で用意します。今回のフォトグラメトリーに使用するソフトウェアはAgisoft Metashapeのスタンダードエディションです。2万円以下で購入でき、参加者の皆様がフィールドスクール終了後に各自の研究やダイビングでも活用できる安価で信用性の高いソフトウェアです。

実技講習①「初めてのフォトグラメトリー3次元測量」
最初に行う実技講習では基本的なカメラのセッティングと撮影方法、ならびにフォトグラメトリーソフトウェアを使った3Dモデルの作成の仕方を練習します。

実技講習②「考古学遺跡のフォトグラメトリー」
前日に撮影した水中戦争遺跡の写真から3Dモデルを作成していきます。

実技講習③「ビデオ動画からのフォトグラメトリー」
前日に撮影した水中戦争遺跡のビデオ動画から3Dモデルを作成していきます。

実技講習④「作成した3Dモデルをシェアする」
作成した3Dモデルから高画質の画像、CGアニメーション、3DのPDFファイル、インターネットへのアップロードとSNSやウェブページなどでのシェアの仕方を学びます。

実技講習⑤「3Dモデルを活用した遺跡のモニタリングと保護」
フィールドスクールで作成した3Dモデルを使用して、CloudCompareという無料の分析用ソフトウェアを使い、どの様に考古学遺跡の効率的な経年変化のモニタリングをしていくかのかを学びます。

 

11.参加者募集期間:2019年8月26日(月)~2019年11月10日(月)

 

12.募集人数(定員):12名(最少挙行人数:6名)

*募集期間末日の応募者が6名未満の場合には実施しません。

 

13.参加申し込み方法 

手続き①:合同会社アパラティスのWEBサイトからお申し込みください。
(参加申込書のダウンロードページはこちらになります)

参加申込書PDFファイルをダウンロードの上、印刷・ご記入し、
apparatus.japan@gmail.com」へ添付メールを送信ください。
または合同会社アパラティスにFAX(0859-30-2033)してください。

 

手続き②:2019年11月10日時点でお申込み人数が6名(最少挙行人数)に達した場合には参加費お振込みのご案内を差し上げます。

 

手続き③:開催決定ご連絡後、日本と現地(チューク諸島)の往復の航空券を各自でご購入下さい。

 

  1. 参加費お支払方法

参加募集期間最終日の2019年11月10日の時点で参加希望応募者が最少挙行人数の6人に達しましたら、改めて11月11日に支払方法と振込先の連絡を参加希望者の皆様に連絡させていただきます。

なお、お支払いの期限は2019年11月末日とさせていただきます。

 

15.航空券の手配ならびに旅行会社との提携

・今回のフィールドスクールは、現地集合・現地解散です。航空券は参加者の皆様が各自でご購入いただくこととします。

・航空券は信頼のできるインターネット航空券検索サイト(Kayak、Expedia、CheapOairなど)を通じての購入をお勧めします。

今回のフィールドスクールの開催予定時期は2019年12月から2020年1月の年末年始になります。そのため日本-チューク諸島(Truk)間の航空券代が割高となることが予想されます。日本-チューク諸島間の航空券の年末年始の平均価格は18万円~20万円程です。

しかし日本‐グアム間(7万円程度)、グアム‐チューク諸島(Truk)間(7万円程度)と別々で購入すれば合計14万円程度に抑えることができます。

・なお、日本国内で集合してグループで渡航・帰国することを希望する参加者、ならびに自力で航空券を手配することができない参加希望者に対応するため、国内の1社以上の旅行会社と提携することを検討中です。

 

 

〔参考画像〕

01フォトグラメトリーを使用した3次元測量の3Dモデルの例

 

02チューク諸島の海の景色

 

03.jpgダイビングポイントの船上からの風景

 

04零戦水中遺跡の写真

 

05チューク諸島の夕日

 

06宿泊予定のトラックストップホテルの部屋の例

 

 

また2019年のGWに行われました「スペイン・マヨルカ島、古代ローマ沈没船水中発掘フィールドスクール」の様子はこちらを参考してください。

フォトアルバム「2019年スペイン・マヨルカ島、古代ローマ沈没船水中発掘フィールドスクール」

 

 

以上