大学生の皆様へ

将来職業としての水中考古学者になるために重要なのがどこの大学に行くかではなく、どこの大学院を卒業したかということです。どこの大学に行くかはそこまで重要ではありません。詳しくは前の「中学生・高校生の皆様へ」を読んでいただきたいのですが、将来海外で水中考古学者として働きたいなら海外の大学院を、日本で考古学者として働きながら水中考古学研究をしたいのなら日本の大学院で学ぶことが前提になります。

 

水中考古学者を目指す学生にとって、それを専門的に学ぶことのできる大学院は世界中にいくつかあります。日本でいえば東京海洋大学もその一つです。しかし重要なのは、日本国内では担当教授の許可を取ったうえで、しっかりとした考古学の知識と経験が備わっていれば、どこの大学院でも独学で水中考古学を学び、一人前の水中考古学者になることができるという事です。(水中考古学者になるために一番必要なのは考古学の知識です。考古学者から水中考古学者になるのは難しくありません。逆にいえば考古学者でなければ水中考古学者にはなれません。)

 

その上で、全てではないですが、将来職業として水中考古学を続けていく上で重要になるのが、どこの「大学院」で(水中)考古学の学位を取ったかです。そのため大学生の皆様は大学学部生の4年間を使い、行きたい大学院に行くための準備をしなければいけません。

卒業後は日本国内の大学院で水中考古学を勉強したいのであれば、しっかりと日本の考古学研究を行っている大学に入り、大学院に入る前に考古学の基礎を身に着けてください。(しつこいようですが水中考古学の知識は必要ありません。)

日本の考古学の研究水準は世界トップクラスです。日本で水中考古学者としてやっていくためには、しっかりと日本の考古学の知識を学部生時代に身に着け、将来のために国内の学会に参加して多くの研究者と会い、研究会に参加し、繋がりを作っていくことが重要になります。

 

海外で水中考古学を学びたいというのであれば、大前提として語学力がなければなりません。特に英語に関しては日常生活でもよいというレベルではありません。海外の文系の学部は理系と違い留学生の数が少なく、英語を母国語とする現地の生徒と共に、彼らでも理解することが難しい事柄を学び、彼らより良い成績をとらなければ生き残っていけません。「日本の考古学専攻の大学院に留学しているアメリカ人が日本人大学院生と共に日本語で授業を取り、日本人以上の成績を残す。そのための日本語能力。」といえば私たち日本人に海外の文系の大学院で求められる英語能力がどの程度かお分かりいただけるかと思います。(苦労しましたが、英語が苦手教科だった私が何とかやっていけたので、勉強さえすれば誰にでも不可能ではありません。)

そういった意味で、海外の大学院を目指す場合は日本の大学にいる間に、ある程度ではなく、出来る限りの語学力を身に着けて、大学院留学への準備期間/足掛かりにしてください。

そのために大学学部生時代に海外へ留学するのは良いのかもしれませんが、実は私としてはそこまで学部生時代の長期留学をお勧めするわけではありません。学部生時代の日本の先生方 、また日本の考古学会との繋がりは思いのほか重要です。もし学部生時代から海外留学をしてしまって場合、大学院卒業後に日本に帰ってきても、考古学関係の職を見つけるのは難しくなります。もし皆さんさんが「海外で水中考古学者として将来働くのが目標で、それ一本に絞っていきたい」というならそれでも良いのかもしれませんが、海外でも水中考古学を専門とする職業(大学教授や政府の考古学者)の数は限られています。それに比べ勉強できる大学院の数は近年多くなっていて、毎年50人から70人ぐらいの新しい水中考古学者が大学院を卒業しています。それに対し毎年水中考古学の職業としての席は数年で1つあるかないかなので、一つのポジションの募集に約100~150人の応募があるのが海外においても水中考古学の現状になっています。

更に私たち日本人は海外では外国人なので、政府関係での仕事(海外の文化庁や国立博物館)には制限がかかります。なので学部生時代はある程度日本の大学や考古学会とつながりを持って置き、日本にも帰ってこれる状況を作っておいたほうが良いと思います。それほど日本の○○大学を卒業しているというのは将来日本に帰って来た時に役に立ちます。それを理解したうえで、海外の水中考古学関連の仕事に就けなかったときに語学力を生かした考古学とは関係ない別の職業に就いてもいいのであれば、海外留学が一番かもしれません。(ハーバード大学やケンブリッジ大学なような超難関大学で考古学を学んだ、または海外(現地)で学んだ本場の古代ローマ史やエジプト考古学のような世界の考古学を、将来日本に帰ってきて教えたいという場合は学部生時代から海外に留学をしていても大丈夫です。)

更に可能であれば日常会話程度でもいいので第二外国語に力を入れてもいいとおもいます。基本的には英語だけでも国際的な研究プロジェクトに参加できますが、英語圏以外の研究プロジェクトで現地の言葉が少しでも話せると人間関係がすこぶるよくなります。しかし大学院生になってからや働き始めてからは研究以外にはなかなか勉強時間が取れないので、学部生時代に少しでも習得しておくと将来役に立ちます。

 

大学生の皆さまは、「将来どのように水中考古学にかかわりたいか」を早い段階である程度明確にして、その夢実現のために最良の大学院を探し、そこに入るための準備を行ってください。それによって将来いきたい大学院の入試の際に他の候補者よりも優位な位置にたてます。水中考古学も他の職業と一緒で、職業としてのそこにたどり着くまでは競争です。回り道も時には必要ですが、 出来れば最短距離で目的をにたどり着けるように賢く頑張って下さい。

 

水中考古学者になるためには? 社会人の皆様へ、

 

 

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