沈没船はタイムカプセル

沈没船は歴史を伝える「タイムカプセル」

「船の考古学」の主な研究対象は「沈没船」です。

沈没船の研究は、考古学全体の中では至極狭い分野といえるでしょう。しかしながら、スクーバダイビングが普及して以降の約50年の間に、この「船の考古学」は欧米の考古学会を中心に非常に重要な役割を担う研究分野になりました。

それは研究対象が「沈没船」のという特殊なものであり、また、その発見場所が「水中」という特異な環境下にあるという2つの要素ゆえに、考古学の他の分野にない特別な研究成果が得られつつあるからだと思われます。

昔の船が何らかの原因で沈没したとします。多くの場合これらの船は積荷を運んでいました。海底に沈んだ後、沈没船はその積荷の重さで海底に押し付けられ、船体の下部と積荷は海底の砂に埋もれてしまいます。

このように、水中でさらに海底に埋もれるという状況が起きたとき、その積荷と船体の一部は完全に酸素が届かない「無酸素」状態になり、有機物ですら何千年ものあいだ保存される環境下に置かれるのです。

つまり、沈没船という水中遺跡からは、さまざまなものが陸上の遺跡では考えられないような良好な保存状態で見つかるのです。さらにこれらの沈没船の積荷は、当時のいろいろな土地から港に集められ、遠くにある別の港に運ばれていたのです。これらの保存状態の良い遺物を最新の科学技術を使って研究することにより、これらの積荷がどこで製造され、どこの港からどこの港に向かっていたかというところまでわかるのです。すなわち何千年前の人々の交易の様子が沈没船を研究することにより明らかになるのです。

また沈没船、つまり「船」自体も当時の最先端の技術を駆使してつくられた機器でした。これらの沈没船の船体を研究することにより、当時の文明の技術水準もわかってくるのです。

これらの理由から、欧米の考古学会では沈没船を「タイムカプセル」と位置づけ、それらを研究する「船の考古学」を重要な研究分野として注目してきたのです。

まとめ

いかがでしたか?「沈没船」という遺跡は、考古学のなかでも特別な研究対象であることに気が付いていただけたら幸いです。なお、沈没船が貴重な遺跡であるがゆえに抱える様々な問題があります。次はその問題について一緒に見ていきましょう。

<水中考古学とトレジャーハンター>

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