久米島 (2017)

久米島沖水中地形マッピング調査

プロジェクトディレクター:管 浩伸 博士 (九州大学)

場所:久米島

水中考古学 久米島
今回の水中調査チームメンバー。真ん中で赤いグラスを持っているのが九州大学の菅浩伸教授です。

2017年11月、今までとは少々異なる水中調査に参加することになりました。

私がこれまで参加してきた水中調査は沈没船をはじめとした水中文化遺産に関わるものでしたが、今回のプロジェクトでは水中地形が調査の対象物でした。プロジェクトリーダーは九州大学の菅浩伸博士です。管博士は九州大学の教授をされており、同大学内の浅海底フロンティア研究センターのセンター長を務めておられます。

菅先生はマルチビームソナー(音響ソナー)の専門家で、海底地形の計測と地図制作などを得意にされています。地質学者でもある先生は、その知見を海底地形調査と3D地図作成に活して精密な海底の3D地図を作成し、さらにこれらのデータを津波などの災害シュミレーションにも利用されています。

マルチビームソナーは様々な周波数の音波を出し、その反響データをもとに3Dの海底図形を作成するための機器です。マルチビームソナーの多くは船で牽引しながら使用するため、広範囲の海底地形のマッピングに適しています。位置情報も船上のGPSから取り込むため、カバーするエリアが広く正確な位置情報を持った海底地形の地図作成が可能となるのです。

菅先生とは最初にオーストラリアの学会でお会いしました。先生も水中文化遺産の地図作成に興味を持たれており、様々なテーマでお話をすることが出来ました。その中で共同研究の案が出来たのです。

私が学生時代に行っていた研究の一つに、レーザースキャンによって作成された3Dモデルとフォトグラメトリーによって作成された3Dモデルを組み合わせるというものがありました。レーザースキャンは光学レーザーを使用し非常に精度の高い3Dモデルを作成を可能にします。その精度は誤差が0.1mm以下にもなります。しかしこのレーザースキャンを使用してできた3Dモデルはテクスチャー(質感)が無かったり、あったとしても、かなりの低画質なものになるという欠点があります。

一方、フォトグラメトリーは写真をもとに作成するため、リアルなテクスチャーを持つ3Dモデルになります。しかし、その寸法に係る精度は0.5mm~1mm程度とレーザースキャンよりも劣り、また対象物の素材によってはさらに精度が落ちてしまいます(フォトグラメトリーは、単色の光沢のある素材や透明の素材でできた物体を苦手とします)。

そのため、考古学者が遺跡や遺物などの対象物を3Dモデルとして保存する際には、寸法重視のレーザースキャンを使用するか、質感の重視のフォトグラメトリーにするかでの議論が起きていました。どちらの方法が優れているかで、それぞれの専門家が言い争いをしていたのです。

そんな状況のなかで、2016年、私はレーザースキャンを得意とするテキサス農工大学の同僚を誘い、両方の利点を組み合わせて、レーザースキャンの寸法とフォトグラメトリー質感のどちらも併せ持つ3Dモデルを作成する手法を開発し学会で発表し、学術論文を投稿しました。

 

久米島 水中考古学
私の6本目となる査読済み学術論文。学術論文の見た目はこんな感じです。

 

この方法論は陸上の遺跡や水中から引き揚げた遺物の記録に使用する目的で作ったものでした。そして、次の段階としてレーザースキャンデータの代わりにマルチビームデータをこの方法論に応用したいと考えていました。

そんな折、学会でマルチビームソナーの権威である菅先生にお会いすることができたので、この方法論のことを相談し、今回の久米島での共同研究が実現したのです。

 

久米島 水中考古学 3
私の部屋で作業をしているマトコ。チャタロウもお手伝い。
久米島 水中考古学 4
出航前のマトコ

 

また今回の久米島での水中調査には、クロアチアから水中考古学者のマトコ・シブリヤクが参加してくれました。

彼とは、私がクロアチアでの水中発掘調査に参加し始めた2012年にグナリッチ沈没船の水中発掘調査で出会い、その後何年もクロアチアで一緒に仕事をしました。2015年、私の専攻分野である「沈没船復元再構築」を学びたいということで、半年間テキサス農工大学に研究員として留学し、忙しい教授の代わりに、私のもとで沈没船復元再構築とフォトグラメトリーを学びました。

その後その知識を活かして、デンマークのバイキング博物館(水中考古学の世界では極めて有名な博物館)への就職が決まりました。

今回は改めてフォトグラメトリーを勉強し直したいということで、1か月の休暇を取り、日本の私のもとに来てくれました。その時に丁度この久米島での調査があったので、アシスタントとして手伝ってもらいました。(実は彼は二人目で、前年の2016年にもドイツから陸上の考古学を先行しているいる若い学者が1ヶ月間勉強しに来ました。私も彼らから様々な刺激を受ける事ができるので、毎年、時間の許す限り研究者を受け入れようと考えています。現在もコロンビア、アメリカ、クロアチアなどから短期留学の依頼があります。次はどんな研究者が来てくれるか楽しみです。)

久米島には約1週間滞在して2箇所の海底地形の3D地図を作成しました。浅い場所に約2日間、深い場所に4日間掛けました。水中地形の3D地図を作成するのは初めてだったですが、菅先生とマトコはもちろんのこと、久米島のいさむ船長や、ありささん、ゆみこさんらベテランダイバーの助けもあり、短期間で大規模な3Dモデルを作成することが出来ました。

 

久米島 水中考古学
マトコに調査場所の地形の説明をしている菅先生。

 

 

浅い場所の海底地形Logo 01_Kume-jima_Shallow_2017

Logo 07_Kume-jima_Shallow_2017

Logo 05_Kume-jima_Shallow_2017

 

 

深い場所の海底地形Logo 01_Kume-jima_Deep_2017

Logo 02_Kume-jima_Deep_2017

Logo 03_Kume-jima_Deep_2017

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これから菅先生のマルチビームデータと、このフォトグラメトリーデータとの組み合わせを行っていきます。

現在、この九州大学との共同研究の他にも、水中ロボットの研究を行っておられる東海大学の坂上憲光先生との共同研究も行っています。近い将来、これらの研究成果を組み合わせて、水深100メートルより深いの場所にある水中文化遺産の広範囲の3D実測図(3Dモデル)作成を高精度で行えるような技術を生み出したいと考えています。

超一流の優秀な先生方との共同研究は沢山のことを学べるので、とても楽しみながら研究を進めることができています。

 

久米島の最終日にはありささんとゆみこさんに島内の観光にも連れて行ってもらいました。

久米島は海が綺麗で、人が親切で優しく、食べ物がとても美味しいところでした。那覇から運賃の低廉な定期船も出ており、交通の便も良好でした。水中調査がなくてもまた帰りたい場所です。

 

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激うまの久米島そばの店。
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もののけ姫に出てきそうな洞窟。
伝統衣装
おもしろい地形

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おちゃめないさむ船長(左上)

 

 

 

次の発掘プロジェクト

マルゲリータ島水中調査プロジェクト(メキシコ:2018年)

 

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