スペイン・マヨルカ島、古代ローマ船水中発掘フィールドスクール
プロジェクトリーダー:山舩 晃太郎
ポートクリスト古代船発掘プロジェクト
プロジェクトリーダー:ハヴィ・パンドジ
場所:スペイン、マヨルカ島

2019年も2018年に引き続きスペインのマヨルカ島で古代ローマ船の発掘を行いました。しかし今回は私にとっても初めての試みにチャレンジ。それが「日本人向けの水中考古学フィールドスクールの開催」でした。これまでも海外の水中考古学フィールドスクールのやとわれ講師などはたくさんしていましたが、日本人向け、さらに自分で開催するのは初めてでした。

私は以前から海外を中心に(というかほぼ海外で)働いて、自分勝手に好きな研究をしており、国内で日本の水中考古学のために長年働いていらっしゃる先生方、先輩研究者の皆様に申し訳なく思っていました。何か自分にも日本の水中考古学のために出来ることがないだろうかと考えていた時(2018年)にマヨルカ島で働くこととなり、水深2mの安全な湾内(ビーチから30m先)に古代ローマ時代の沈没船が何隻も沈んでいるという、水中考古学フィールドスクールに理想的な場所に出会うことが出来ました。
2018年にスペイン側の水中考古学者達に日本人を対象にした水中考古学フィールドスクールを開催したいといったところ、私と彼らが長年一緒に働いている仲の良い友人関係だったこともあり、あっさり快諾。
でも参加者の日本人たちが考古学研究者ではなく、ダイビングもほぼ素人ということは直前まで伏せていました。これを彼らに話したときは(とてもいい意味で)爆笑されました。彼らはこの日本人向けフィールドスクールも、私が他国で教えているフィールドスクールのように、既に水中考古学を大学や大学院を学んでいる学生達や、陸上の考古学の専門家、そしてそれを補助するプロのダイバーが来るものだと考えていたみたいです。

参加したい人が誰でも参加できる本物の古代船の埋まっている水中発掘現場でのフィールドスクールなど世界中みても前例がないからです。してやったり!
ただフィールドスクールの講義内容は私が他国の大学院や研究機関のフィールドスクールの講師として雇われて教えているものと同等のもの。妥協はしていません。
私もフィールドスクール終了後に感謝の意味を込めて2週間無料で彼らのために働いたので、スペイン側も大喜びしてくれました。

そして2019年のゴールデンウィークに11名の日本人の皆さんがスペインのマヨルカ島に到着、11日間の水中発掘フィールドスクールが開催されました。笑いあり・笑顔あり・爆笑あり、大成功でした。(東京海洋大学の岩淵先生も視察と特別講義のために駆けつけてくださいました。)
本当に素晴らしい参加者の皆さんと出会えました、そしてスペイン側の完ぺきなサポート。参加者の皆さんにはしっかりと水中考古学の現場の雰囲気と楽しさを感じ取り、そして水中発掘のイロハを学んでいただけたと思います。





私自身、本当にこのフィールドスクールを開催してよかったと感じました。
初めて一から開催するフィールドスクール。正直何もわからないまま手探りで、半年前から他の国のプロジェクトで働きながら深夜にひっそりと開催に向けての準備作業。何人ぐらい参加者が集まるのかも、来ていただいた方たちに水中考古学を本当に楽しんでもらえるかもわからず不安だらけでした。
でも嘘の水中考古学ではなく、実際の現場で働いてもらいながらその楽しさを体験してもらいたかった。
そして報われました。日本人参加者や私だけでなくスペイン人の水中考古学者達にも楽しんでもらいました。スペイン人の同僚達には、今後も日本人向けの水中考古学フィールドスクールをスペインで開くならいくらでも喜んで協力するといってもらえました。(フッフッフ、その言葉、後悔するなよ!)



何よりも楽しかった!私はいつも楽しみながら水中考古学をしているのですが、その面白さを皆さんと共有することが出来たと思います。
あっという間の10日間でした。最後の皆さんとのお別れの時は自分でも驚くほど寂しかったです。
その他の2019年のマヨルカ島でのフィールドスクールの様子はこちらをご覧ください。
2019年スペイン、マヨルカ島、古代ローマ沈没船水中発掘フィールドスクール、フォトアルバム


フィールドスクールが終わってから約2週間はいつも通り通常営業で働きました。今年は新たに船首部分の発掘。貴重な古代ローマ時代の輸送船の遺跡です。
沈没船の発見場所が細かい砂地なので保存状態がよく、2000年前のロープなどがそのままの形で発掘されます(でも少し触ったら崩れるぐらい脆くなっているので発掘には細心の注意が必要になります。)



こちらが私が作成した古代ローマ沈没船の3Dモデル。
謎の船。他の場所で発掘された同時代の古代船に比べフレームが大きく、中型船なのに大型船と同じぐらいの内部構造をしています。船首構造もこれまで見てきたものと違っています。次の発掘シーズンでいよいよ船の全体の発掘が行われ、そのデータをもとに分析と研究が行われていきます。
水中考古学。まだまだわからないことだらけ。だからこそ面白いのです。

そして2019年のマヨルカ島は「日本人向け水中考古学フィールドスクール」を開催したという点で、私にとっては大きなターニングポイントになりました。
これからもいろいろな場所で水中考古学フィールドスクールを日本人を対象に開き、普通は経験できない世界のプロの水中考古学の最前線を、水中考古学に興味のある全ての方に経験してもらえるように努力し続けます。(そのために海外でこれまで作り上げた私の研究者としてのコネを乱用しまくります。)
マヨルカ島のフィールドスクール参加者たちとはLINEグループで今でも連絡を取っていますが、ほとんどの皆さんが水中考古学の楽しさにどっぷりハマってくれたようです。日本で集まって飲んだりと、今ではすっかり良い水中考古学者仲間です。

日本全国に電車マニアがいるように、これから(歴史)船マニアを増やしていきます。
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