勝浦 (2018)

ハーマン号水中調査プロジェクト

プロジェクトリーダー:井上たかひこ さん (特定非営利活動法人・水中考古学協会)
                                          玉井敬信 さん (特定非営利活動法人・水中考古学協会)
                                          大槻巌 さん (特定非営利活動法人・水中考古学協会)

場所:千葉県勝浦市

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2018年の7月に千葉県の勝浦市で19世紀アメリカの蒸気船ハーマン号沈没船遺跡の現状調査と測量図作成プロジェクトが行われました。

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アメリカの蒸気船ハーマン号は戊辰戦争末期の1869年に北海道の五稜郭を占拠した幕府軍の残党軍を討伐するため、熊本藩主細川よし邦にチャーターされ、藩兵350名を乗せ北海道へ出航しました。しかし出航後すぐ、千葉県勝浦沖で嵐にあい沈没。200余命もの命が失われた大海難事故になりました。これがハーマン号海難事件です。

ハーマン号の水中沈没船遺跡は1998年に私の大学院の先輩でもある水中考古学者の井上たかひこさん(左写真)によって再発見され、その後何度かの水中調査が行われてきました。今回は水中遺跡の実測図を作成したいとのことで、井上さん、玉井さん(右写真・右)、大槻さん(右写真・中央)が理事をつとめる水中考古学協会から依頼を受けて参加することになりました。

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ハーマン号の水中遺跡がある勝浦市の川津漁協沖は「関東の鬼ヶ島」と呼ばれるほどの岩礁地帯で、潮の流れも速く、潜るのが大変でした。船が座礁して沈没するのも納得です。更に海底にはびっしりとカジメという海藻が生い茂っていて、最初の数日はこのカジメを刈り、ハーマン号の船体を目視できる状態にする作業に追われました。

私の3次元測量の作業が終わった後は、九州大学の浅海底フロンティア研究室の菅教授のチームが合流して、沈没船遺跡周辺のマルチビーム測量を行いました。菅教授とは2017年に久米島で一緒に働らかせていただいて以来様々な共同研究を一緒にさせていただいています。

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当初は7月21日から10日間の作業を予定していたのですが、台風も近づいていたので4日間早く切り上げることになりました。無事に必要な作業はすべて台風が上陸する前に終わらせることができたのでプロジェクトは大成功でした。2019年度内にこれまでの調査報告をまとめ、ハーマン号沈没船水中遺跡をより周知された水中文化遺産として、その歴史を次の世代に伝えていく予定です。

今回は久しぶりの日本での水中文化遺産関係の仕事になりました。私は海外での仕事がほとんどなので、日本で何十年も前から水中文化遺産関連のプロジェクトを行っている先輩研究者の方々とご一緒に仕事ができてとても良い経験になりました。特に興味深かったのが、地域の漁協組合とのやり取りです。海外でのプロジェクトでは、その地域の行政機関、海軍、ダイビングコミュニティーとのやり取りをしながら水中調査を行うことが多いのですが、日本の海ではその地域の漁協組合がとても大きな権限を持っていて、すべての作業工程が漁協組合の協力によって行われています。そのため、水中文化遺産の調査を行う考古学者や研究者はただその現場で働くだけではなく、いかに事前から漁協組合と良好な関係を築けているかによって、作業効率が大きく作用されることになります。このことは国外で働いている私にとっては初めての経験で、今後のためにとても良い経験になりました。今回のハーマン号の調査が上手くいったのも井上さんをはじめ、玉井さんや大槻さんの長年の積み重ねがあってのことだったのだと勉強させていただきました。

そして何より嬉しかったのは、日本国内でのプロジェクトでは海の幸のご馳走が最高だということです。海外でもカルパッチョなどのほぼ生で海産物を食べるところもありますが、やはり刺身などの新鮮な海の幸では日本にかなうところはありません。たらふくご馳走になりました。今後も機会をいただければ積極的に日本国内の水中文化遺産保護のために働かせていただきたいです。先輩研究者の方々の話を聞かせていただきながら、とても楽しい時間を過ごせました。

 

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