コロンビア (2016)

ボカチカ沈没船遺跡プロジェクト

(Bocachica Shipwrecks Project)

プロジェクトディレクター:カルロス・デルカイロ教授(Carlos Delcairoh)

場所:カルタヘナ、コロンビア

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2016年7月末、テキサス州ヒューストンの国際空港にて。 10年間の留学生活を終了し旅立ちの時。

2016年5月、私はテキサス農工大学大学院で博士号を取得し卒業しました。そのあと6月にシャンプレイン湖での2年目のプロジェクトに参加し、7月にそれまで住んでいたアパートを引き払い、研究室のデスクを片付け、荷物を日本に送り、ここに10年間(語学3年・修士課程3年・博士課程4年)のアメリカでの留学生活が終わりました。その後、日本に直接帰国するのではなく、発掘調査に必要な機材だけを持ち、仕事の依頼を受けていたコロンビアに向かいました。学生生活が終わり、本格的に水中考古学者としての生活が始まったのはこの瞬間からです。(大学院生時代は研究室の助手として大学から支払われていた給料がごくわずかなものだったので、博士課程の時から発掘調査の依頼を受け、隙を見つけて小遣い稼ぎの感覚でプロとしてすでに隠れて働いていました。)

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2016年 ボカチカ水中発掘プロジェクトのチーム
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コロンビア屈指の観光地でもあるカルタヘナ。城砦都市である町は昼も夜もとてもきれい。

コロンビアでの発掘はコロンビア北部の港町のカルタヘナで、18世紀に行われたスペイン対イギリスの開戦時に沈められたスペインの「サン・フィリップ」という船の水中発掘調査でした。

現在もカルタヘナはコロンビアの主要な港として機能していて、巨大なタンカーが港の出入り口を出入りしています。しかしながらカルタヘナ湾の水深は10m程と浅いので、人工的に海底をドレッジでえぐり、巨大タンカー用の航路を作っています。この巨大タンカーの通り道をつくったさいに発見されたのが、今回のサン・フィリップ沈没船なのです。そのためこの沈没船遺跡は海底に埋まっている船体が半分がえぐり取られているという珍しいものでした。遺跡が破壊されているのは残念ですが、船の断面が発掘前からきれいにみえるというおもしろい状態でした。

ナショナルジオグラフィック:前年(2015年)のプロジェクトページ(英語)

真夏のカルタヘナはものすごく暑く、汗をだらだらと流しながら仕事をしていました。水中考古学ではもちろんのことながら、一般の観光地のようにダイブショップの人がいろいろと準備をしてくれるわけではないので、酸素ボンベのタンクやその他の機材や道具もすべて自分たちで準備しなければなりません。なので高温多湿での作業はものすごく体力を奪われます、、、、と思っていたのですが、3日間ほどで慣れました。実際のところは慣れたというよりはあきらめたといった方が適切かもしれません。

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水中の様子。沈没船遺跡は湾の入り口に位置していたため、流れがはやく、透明度も良くない。

発掘作業はコロンビア海軍の協力もあり極めてスムーズに進みました。しかしながら、あるとき水中で作業していたら急に全身に振動が走り爆発音が。何かと思って作業後に聞いてみたら、あれは地元の漁師がダイナマイトを使って漁をしていたとのこと。もちろん法律違反です。取り敢えず水中作業の時間はダイナマイトを使わないように頼んで作業を再開しました。

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発掘場所から100mほどの所にあるスペインの要塞遺跡。 ドローンを使い3Dモデルを作成した。

今回は水中作業の他にもドローンを使ってカルタヘナにあるスペインの要塞の3Dモデルもつくりました。

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カルロス教授とその生徒

今回の依頼主はコロンビア首都のボゴタにあるエクスタナード・デ・コロンビア大学のカルロス教授でした。私が大学院生のときに、彼がテキサス農工大学のカストロ博士を訪ねてきて知り合い、仲良くなりました。

彼は40歳代前半なのですが、10年以上前からコロンビアに海事考古学を根付かせるためにたいへんな努力をしてきた考古学者です。その甲斐もあってコロンビア内での信頼はあつく、コロンビア政府の考古学の仕事を受け持ったり、今回のように海軍の援助を受けたりできています。彼の学生も何人か水中発掘に参加したのですが、彼は学生たちの良きお兄さんという感じで、良好な信頼関係が見て取れました。

いまでは私の良き同僚であり友人の一人です。そして今回のプロジェクトには沢山の考古学者が南アメリカ中から集まり彼を手伝っていたのが印象的でした。

2016年にこのエクスタナード・デ・コロンビア大学にコロンビアで初めて大学院に海事考古学のプログラムが出来ました。彼の長年の努力が実ったのです。

私もそんな彼をサポートするためにエクスタナード・デ・コロンビア大学から依頼をうけ、特別外国人教授を引き受けることになりました。これはエクスタナード・デ・コロンビア大学の新たな試みで、海外の専門家を教員として雇い、技術と知識を学生に授けるというものです。(いちおう教授職なのに非常勤という複雑な立場。)多くの場合は私のよう一年に一回、必要に応じて1週間程度の集中講義を行い、短期集中で技術と知識を伝えます。

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2017年8月の授業風景
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陸上でも使えるフォトグラメトリー講習
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生徒達と昼食

私も2017年8月に1週間、水中での記録作業とフォトグラメトリーについての集中講義を行いました。学生たちは非常に明るく優秀で、とても楽しいものでした。時間が許す限り続けていきたいものです。(大学から教員あてへのEメールがよく届きますがスペイン語なので全く内容がわかりません。担当している博士課程の学生の口述試験や面談があるときは時差があるため朝の4時におきて、スカイプで行ったりしています。)

エクスタナード・デ・コロンビア大学の特別外国人教授紹介ビデオ

そしてコロンビアでなにより気に入ったのが、

コロンビアンコーヒー。

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絶品コロンビアンコーヒーをふたついただく。

これはもう美味し過ぎます!コクと味の深みが違う。そして何よりも嬉しいのが、彼らはコーヒーの飲み方をあまり気にしないというところです。

例えばイタリアもコーヒーは美味しいのですが、飲み方へのこだわりが強すぎて、特別な店以外はアイスコーヒーなど置いていません。コーヒー・フラペチーノなどイタリア人への侮辱と受け取られます。イタリア人の友人と一緒にイタリアのカフェにいった時は、くどくどとコーヒーの正しい飲み方を説明され、実際にコーヒーを飲む際には店中から視線が飛んできます。飲み終わって「美味しかったよ」と言わないと何をされるかわからないような雰囲気を何度も感じました。実際にイタリアのコーヒーも凄く美味しいのですが、あまりリラックスして飲めるものではありません。

その点、コロンビアのコーヒーはホットコーヒーからアイスコーヒーまで何通りもの種類と飲み方があり、コーヒーフラペチーノの種類も豊富です。そういう意味ではアメリカ発のスターバックスに似ています。そしてどの店でも(チェーン店でも)味がスターバックスよりも格段に美味しいのです。

食事も美味しく(南米は肉食文化なので、肉料理が美味しい)、私にとって訪れるのが楽しみな国の筆頭です。

次の発掘プロジェクト

屋良部沖海底遺跡群水中調査(石垣島:2016年)

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