クロアチア (2012, 2013, 2014)

グナリッチ沈没船プロジェクト (Gnalic Project)

プロジェクトディレクター: イレーナ・ロッシ博士 (Dr. Irena Rossi, University of Zadar)、フィリップ・カストロ博士 (Dr. Filipe Castro, Texas A&M University)

 

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グナリッチ島。この岩の小島に船がぶつかり沈没した。

 

2012年に初めてクロアチアの発掘調査に参加した時は、まさかこの国が自分にとって第3の故郷といえるような特別な場所になるとは想像もしませんでした。

イタリアでの発掘調査の翌年の2012年に再びカストロ教授に帯同して、クロアチアで16世紀後半のベネチア船の水中発掘調査に参加しました。以降、2013年、2014年、2016年、2017年と、博士論文の執筆とテキサス農工大学の親友のプロジェクトの手伝い多忙であった2015年を除き、毎年約2カ月間クロアチアの発掘調査に参加しています。2016年以降は独立自立した考古学者として依頼をいただいており、2018年も6月と10月に2回発掘調査に参加予定です。

2012年~2014年の3年間は、400年前のベネチア船の発掘をテキサス農工大学とクロアチアのザダー大学 (University of Zadar) の共同で行いました。その後2015年からは、この船の発掘は「アドリアス・プロジェクト」という包括的な研究プロジェクトの一部となり、テキサス農工大学も部分的に協力しながら、ザダー大学の単独プロジェクトとして実施されることになりました。

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2012年。テキサス農工大学チーム。カストロ教授(中央)と同級生のデーブ(左、元アメリカ海軍原子力潜水艦の船長という経歴の持ち主。)
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2013年。グナリッチ沈没船の発掘調査は毎年ドイツのダイビングクラブが手伝ってくれている。
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2014年。テキサス農工大学とザダー大学のチーム。

 

クロアチアはイタリアの東側、アドリア海を挟んで対面に位置し、南北にのびる美しい海岸線が特徴の国です。その国の位置ゆえに、古代ギリシアやローマ帝国の都市が点在し、豊かな考古学資料が眠る場所でもあります。

 

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また、その海は美しく、海に点在する島々には「アドリア海の真珠」と呼ぶにふさわしい景色が広がっています。

 

クロアチアでの発掘調査は、狭いアパートに考古学者と考古学者を志す大学院生が2カ月間一緒に過ごしながら働く、まさに「ザ・発掘調査!」というような環境の下で行われます。計5回・延べ約10ヶ月間(2018年2月現在)をここで過ごしている私にとって、仲の良い同僚(友人)も数多いこともあり、毎年「発掘の仕事に行く」というよりは「恒例の合宿に参加する」といった感覚で参加できる業務です。

 

スペイン人の同僚ハヴィア・パンドジの会社「バブル・メディア」による水中発掘作業の様子を編集したビデオ

 

このグナリッチ沈没船は16世紀後半に、オスマン・トルコ帝国の王族の依頼により、イタリア北東部のベニスからイスタンブールに向かった商船です。その航海の途上でグナリッチ島に座礁し沈没したものです。

積荷はベニスのガラス工芸品や、高級な家具、また錫や塗料の原材料など多種多様なものであり、それらの積荷から当時の交易の状況がどのようなものだったか、現在でも研究が続いています。また16世紀後半のベネチア船に関する考古学資料は乏しく、この沈没船の船体発掘により、当時どのような技術で船が作られていたかという研究も進められています。

 

クロアチアでの発掘は私の専攻分野である船舶の構造研究や交易の研究以外の面でも特別な意味があります。それは「フォトグラメトリー」との出会いです。

2012年と2013年、当時最新鋭のコンピューターソフトであったフォトグラメトリーの水中考古学での活用をクロアチアの発掘調査で試した研究者がいました。その時、私は別の重要な仕事を振り分けられていたので特にフォトグラメトリーに関わってはいませんでした。が、2014年のシーズン直前に急きょカストロ教授からフォトグラメトリーを使って水中記録作業を行うよう依頼され、これを引き受けました。

私の専攻は「船の考古学」です。そこで、フォトグラメトリーの説明書を第1ページから読み解きながら、このソフトを使って沈没船の記録を行い3Dモデルなどを作成しました。その作業が首尾よく遂行でき、また、それまで他の研究者が作成した水中遺跡のフォトグラメトリーの3Dモデルよりも精密なものが出来たため、ここから考古学的に有益なデータを数多く取り出すことが出来ました。

その方法論を学会で発表し、また、学術論文として投稿したところ、他の国の水中考古学達の目に留まり、私の名前が知られる様になりました。そのことが契機になり、現在、様々な国の研究機関から水中発掘調査への参加・支援の依頼をいただけるようになりました。私の水中考古学研究者として現在に至るキャリアはクロアチアでの発掘調査からはじまったといっても過言ではありません。

2014年に私がフォトグラメトリーの3Dモデルをつかって作成したCGアニメーション

 

 

 

次の発掘プロジェクト

ロッケリー・ベイ水中調査プロジェクト(トリニダード・トバゴ:2015年)

 

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