縫合接合の実物大再現船、ジプティス

今回の15回目のISBSA(船舶考古学国際学会)の運営委員会を務めた南フランスのエクス・マルセイユ大学は西地中海の古代船研究では最大の学術機関で、現在も様々な古代船の考古学研究が行われています。

そのエクス・マルセイユ大学の古代船研究の1つとして復元されたのが船の外板を縫い合わせて船を組み立てる紀元前600年頃から紀元前400年前に古代地中海で使用されていた縫合接合の古代船のレプリカ船「ジプティス」です。

古代ギリシャの縫合接合船についてはこちらをご覧ください。

古代ギリシャ・フェニキア・エトルリアの造船技術

ジプティスはマルセイユの建設現場で発見され発掘研究されたプレース・ジュレスバーネ第9号船を元にしたレプリカ船です。この沈没船は古代ギリシャ世界を中心に約200年間だけ使用された造船技術が見ることのできる貴重な考古学的資料です。その古代技術をより深く理解するためにフランスの水中考古学者達によって数年前に造られたのがジプティスです。この学会ではこの復元船を間近で見ることができました。

板と板が紐で縫い合わされています。そしてフレーム(助骨)も外板と縫い合わされています。これまでも縫合接合を使用した古代船について勉強したことはありましたが、実際にそれを用いた船に乗ってみるのとでは違います。このような船が2500年前の人々によって造られ使われていたのです。

このレプリカ船の元となったプレース・ジュレス・バーネ第はマルセイユ歴史博物館に展示されています。

展示されている遺跡からは縫合の穴が見て取れます。なぜこの技術が紀元前600年頃に現れて、紀元前400年頃に姿を消していったのか?造船のコストや修理の手間など様々な仮説はありますが、考古学的情報(沈没船)の数が少なく定説となりうる結論が出ていません。縫合接合の船の遺跡が見つかるのは紀元前6世紀頃からですが、紀元前8世紀頃のホメーロスの叙事詩にも縫合接合で造られた船の記述が出てきます。神話の時代の船の謎を解く。古代船研究の醍醐味です。

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