ドゥブロブニクの防波堤遺跡水中画像公開

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時系列がめちゃくちゃになってしまいましたが、私が11月末から12月初めまでクロアチアで行っていたドゥブロブニクでの水中発掘を紹介したいと思います。

クロアチア南部に位置する城塞都市ドゥブロブニクは中世の街並みを城壁内に残し、美しい世界遺産の町として世界中から観光客が集まってきています。そのドゥブロブニクの港にある防波堤遺跡の水中発掘が今回の私たちの仕事でした。(最初の写真のポストカードで指差している場所です。)

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上の写真が防波堤遺跡の上で撮影したもの。下が水中写真になります。建設に使われた各岩の大きさは3m×1m×1m程あり、これらを海中で規則正しく組み上げた当時の建造技術には驚かされます。

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この防波堤は16世紀にドゥブロブニクがベネチア共和国に属していた時代に建設されたものでした。現在でも防波堤としての役割は残しつつも、「そこにただあるもの」として何百年も放置されていました。考古学者が正式に水中発掘調査をするのは今回が初めての試みでした。

興味深かったのが、この防波堤の北側(陸に近い方)には16世紀に建設されたものとは明らかに違う小さな長方形の岩を使用した建設様式で建てられた壁が水中で見つかったことです。

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上が発掘前の遺跡、そして下が発掘後の水中写真です。一週間かけて約2m掘りました。

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この大部分が埋まっていた北側の水中の壁の遺跡は、防波堤の他の部分とは明らかに構造が異なり、古代ローマ時代の建築様式に似ていました。歴史上の通説ではこのドゥブロブニクに人が定住して町を作り始めたのは紀元6世紀ごろが始まりとされ、それ以前の高度な建築物がこの場所で発見されたらクロアチア南部の歴史がひっくり返ることになります。現在この遺跡から見つかった木片のサンプルなどを専門の研究機関に送って詳しい分析結果が出るのを待っています。結果が出るまで数カ月かかりますが、私たちとしてもこのサンプルが6世紀以前のものであるなら面白いと考えています。

私は発掘作業を手伝いつつも、いつものように水中記録作業を一任されていたので、写真測量作業のため泳ぎまわっていました。水深の深い場所での作業と違いこのドゥブロブニクの防波堤遺跡は水深が2mから6mほど。潜水病の心配もなくボンベ内の酸素も十分持つので、1回の潜水作業が2時間、一日計4時間泳ぎながら作業をしていました。さすがに毎日くたくたで、夕食を食べる気力もなく寝落ちする夜もありました。日本に帰ってきた今も疲れが抜けていません。ただ世界遺産ドゥブロヴニクで水中発掘できる機会などそうそうあるわけではありません。たくさん楽しませてもらいました。

そしてこのドゥブロヴニクでの仕事が今年最後のクロアチアでの仕事でした。様々な歴史が入り混じる美しいアドリア海の国クロアチア。来年もお世話になる予定です。

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