零式艦上戦闘機の水中遺跡写真

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無事にチューク諸島でのフィールドスクールの終わりました。今回のフィールドスクールはユネスコの出資のもと、太平洋で古くから水中考古学研究をしているグアム大学のビル・ジェフリー教授が指揮を執り、ミクロネシア連邦の各州、そしてマーシャル諸島やパラオ諸島の文化遺産保護の若い責任者や考古学者たちを集め、チューク諸島で開催されました。

フィールドスクールについての詳しいことはまた後で書こうとおもっていますが、結果を言うとフィールドスクールは大成功でした。そして私個人的にもとても嬉しい発見がありました。まずはフィールドスクールの後半はフォトグラメトリーの講義を中心に行われていきました。参加者の彼らにとってはフォトグラメトリーを使うのは初めてだったのですが、この安価で効率的な技術の習得をとても喜んでくれて、講義後も残って練習してくれていました。彼らは自分たちの島に帰ったら、まず他の役員たちにもこの技術を教え、すぐにでも活用していくのだと言ってくれて、何度も「ありがとう」という言葉をくれました。とてもやりがいがあり、私も毎日が充実していました。

そして、私にとっての嬉しい発見というのは、彼らの戦争遺跡についての見解です。私は日本人として次の世代に戦争の事実を伝えていくためにも太平洋戦争の戦争遺跡の保護をしていきたいのですが、実際の戦争遺跡が多く残っている太平洋諸国の地域に住む人々は日本やアメリカの戦争遺跡について正直どう思っているのかはわかりませんでした。例えばチューク諸島(旧トラック諸島)では日本の統治下では比較的平和に暮らしていたのですが、太平洋戦争がはじまると日本軍によって住処を移動させられ、アメリカ軍の空襲によって、日本軍とは関係のない島の人々も多く命を落としました。つまり彼らにとっては戦争遺跡は負の遺産でしかなく、日本人やアメリカ人の提唱する戦争遺跡の保護などは場違いな考えかしれないという不安が常にありました。フィールドスクールも終わりに近づいたころ、彼らとも仲良くなったので、思い切って彼らの意見を聞いてみました。

彼らは、戦争に巻き込まれたことによって与えられた被害について十分に認知していました。しかし、統治下での状況がどうであれ、彼らの祖父母さん達は日本語の教育を受け、日本軍が撤退した後も、戦争後の当時の話をしてくれたのだと言っていました。そして今は亡くなってしまった、かれらのお祖父さんやお祖母さんを思い出させてくれるのもこれらの戦争遺跡なのだと言ってくれました。つまり日本軍の残した戦争遺跡は彼らにとって戦争直後は負の遺産だったかもしれないですが、現在では彼らの亡くなった家族の思い出とともに地域の歴史の一部となり、また彼ら自身も子供のころから遊び場となっていた場所も多く、彼ら彼らにとっての文化遺産としての認識していました。そして彼らは自身の文化遺産として、これらの戦争遺跡を次の世代まで守っていきたいと考えてくれています。これはチューク諸島だけではなく他の地域から来た参加者も同様であると言ってくれました。

そして、そこに日本やアメリカからも同じように戦争遺跡の保護を行おうとしている考古学者が訪れ、今回のように一緒に仕事ができるのは彼らにとってもとてもうれしいことなのだと言ってくれました。かつて彼らに迷惑をかけてしまった日本出身の考古学者としてこのような言葉をかけてもらえ、とても嬉しくなりました。

そして、彼らが今回学んだフォトグラメトリーには、戦争遺跡の保護やモニタリングに活用できる他にも、より多くに人々に3Dモデルを通じて戦争遺跡の知識と情報を共有し、遺跡を周知化し、今後多くの日本人やアメリカ人を観光客として彼らの地域に招待できるようになるという可能性を秘めています。より多くの外国人が戦争遺跡を訪ねに来れば、それによって地域が豊かになります。

最後に彼らは、また是非フィールドスクールを開催して、これからも戦争遺跡や彼らの文化遺産の保護を一緒にやっていきたいと言ってくれました。私も今後もできる限り彼らと一緒に働いていきたいと思いました。「日本の戦争遺跡」ではなく、「私たちの戦争遺跡」。少しでも何か役に立てることを行っていこうと考えてます。

 

 

さてさて、タイトルからかなりずれてしまいましたが、下の写真は彼らの水中フォトグラメトリー講習の練習中に撮影した零式艦上戦闘機、通称「ゼロ戦」の水中遺跡の写真です。チューク諸島の海はため息の出るほど美しい場所です。

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フィールドスクールも無事に終わり、現在はジェフリー教授と二人で島に残り、戦争遺跡のモニタリング用3Dモデルのデータを集めています。あと4日、体力の続く限り潜りまくります。

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